高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

『ブックオフを潤すデジタル疲れ』

 最近の新聞で「デジタル疲れ」と「オワコン」という言葉を目にした。オワコンとは「終わったコンテンツ」の略語で、業績が低迷してきた「ブックオフ」がそのネット用語で語られた。そして、デジタルサービスが広がる中、他者とのコミュニケーションを敬遠する「デジタル疲れ」という用語も出始めている。
 デジタル疲れがオワコンの「ブックオフ」の業績を復調させている(2019年4月~6月期前年同期と比べて売上高は6%増、純利益は2.9倍)というのが、その記事の内容であった。ブックオフの宿敵であるフリーマーケットアプリ大手のメリカリからの思わぬ恩恵で、商品発送など個人間取引の手間を嫌ってリアル店舗に回帰する消費者が増えているという。いわゆる「メルカリ疲れ」からの動きである。
 フリマアプリを通じた中古品売買は、スマートフォンで済む手軽さがあり、しかも買い取り価格はメルカリが優位だ。ある中古商品では、ブックオフが5千円とすると、メルカリは7千円などのような差があるという。だが、フリマアプリを使うと個人間で価格交渉をしたり、配送や梱包をするなど、手続きが面倒と考える消費者が実店舗に戻り始めた。
 そこで、ブックオフは、都心部を中心に書籍やブランド品などの買い取りを担う小型店「総合買取窓口」を広げ、所得水準の高い都市部での買取力を高め、大型店の品揃えを充実させるなどの新たな戦略を取り始めた。復調が一過性に終わるリスクもあり、ブックオフの経営におけるリスクマネジメントが試されている。ネットサービスが普及する中でも、リアルの強みをアピールし、デジタル疲れの消費者の潜在需要を取り込むことができるかが、店舗の生き残りを左右することになるだろう。
 本稿の最後に、中古品買い取りのリアルとネットの違いをまとめてみた。ちなみに、筆者はリアル店舗主義である。

◆リアル店舗(ブックオフなど)
・メリット:多数の本や雑貨をまとめて買い取る、買取価格は一律で交渉はない
・デメリット:買取価格が安い、ネットより商品を探しづらい
◆フリマアプリ(メルカリなど)
・メリット:スマートフォンで出品、買取価格はリアル店舗より高い
・デメリット:個人間で価格交渉する場合も、出品者が配送や梱包する

(出所:日本経済新聞、2019年8月16日、12面)

 

『アサヒビール30年目の逆襲』を読んで

 アサヒビールの経営について知り始めたのは、同社が1997年度経営品質賞を受賞したときからであった。当時、スーパードライが爆発的な売れ行きで、KARAKUCHIがビール業界のキーワードになっていた頃である。その要約版報告書は、いまでもバランススコアカード(BSC)の戦略マップとスコアカードの演習ケースとして使わせていただいている。「うまさと鮮度」の品質戦略と「社会的責任」の環境戦略で、売上高営業利益率を高めていく戦略の策定と展開を目指した経営のシナリオは、筆者にとって印象的な経営モデルで、吾妻橋にある同社の戦略担当者へ取材をしに行ったものである。
 折しも筆者が勤務していたフィリップス社でもEFQM(欧州品質賞)をグローバルに展開をしていたので、日本におけるベストプラクティスとして、リコーの事例とともに社内会議で発表をしてこともあった。そのような経緯もあり、書店で同書を見つけたときには、躊躇なく購入をしてしまった。
 同書は、主にマーケティングやブランドの戦略について書かれているノンフィクションであるが、そのまとめとして、平野伸一社長へのインタビュー「ものづくりのイノベーションで世界へ」を紹介したい。平野社長は、同社が1987年発売のスーパードライを最後に目立ったヒット商品がないことに危機感を持ち、大幅な増収増益へと舵を切る必要があること、その為にはイノベーション(成長戦略)とコストリダクション(聖域なき構造改革)を経営方針とすること、などを社内で発表。販売シェアだけでなく、技術の優位性を各カテゴリーでNo.1になることで競争優位ポジショニングを確立し、それによって得た原資を次のイノベーションや商品戦略に回していく方針を打ち出した。
 イノベーションの事例としては、麦芽を増やしても糖質がゼロのまま安定する「最適点」を発見したのはイノベーションであり、その技術は糖質ゼロを維持しつつ麦の使用量を30倍に高めた「クリアアサヒ贅沢ゼロ」へと上市。
 また、コストリダクションはリストラなどのコストカットとは違い、従来は購買部門だけの取り組みだったのを、これからは商品設計からはじまり、あらゆる面において全社で取り組むことにより、大型商品が育てば、スケールメリットによる原価低減や製造・物流コストの効率化、つまり全社最適化経営につながっていく発想である。
 そして、海外ビール会社のM&Aを通じて、スーパードライやニッカウィスキーをグローバルブランドに育てる戦略も始まっているという。筆者が使わせてもらっているBSCも、そろそろ修正の必要があるようだ。

(出所:永井隆(2017)『アサヒビール30年目の逆襲』日本経済新聞出版社)

 

根強い集客力に見る100円ショップのBSC的考察

 国内消費の現場で100円ショップの存在感が高まっている。2019年度の店舗の増加数で100円ショップ大手4社の合計(310店)がコンビニエンスストア大手3社の合計(276店)を上回る見通しだ。スーパーなどが中核テナントとして誘致する動きも目立っており、小売業の力関係が変化しつつある。
 ちなみに、縦軸に「店舗数増加率」、横軸に「売上高増加率」で業界別のポジショニングをプロットしてみると、両方の因子ともスーパーやコンビニよりも高く位置にあるが、売上高増加率ではドラッグストアにかなわない。
 100円ショップの躍進の要因のひとつに、スーパーなどの誘致元の期待と満足が満たされていることにある。100円ショップで日用品を売ってもらい、誘致したスーパーは総菜や生鮮品の売りがを広げることができ、若い世代が来店してくれる客層の拡大を図ることができる。この場合、誘致するスーパーにとって100円ショップはビジネスパートナーとなる。
 二つ目の要因としては、台頭するネット通販への抵抗力もある。おしゃれな商品も増えて割安なので、送料もかからず、リアル店舗で選ぶ楽しさがあるということだろう。三つ目は、消費増税前後に消費者の節約志向の高まりもある。四つ目は、コストの安い海外での生産と商品輸入による低価格商品の提供である。
 その一方、成長する100円ショップにも課題がある。薄利多売のビジネスモデルなので、1商品あたりの粗利が小さいこと。そのため、人件費の高騰は他の小売業よりも重くのしかかる。そのため、人件費抑制のためにセルフレジやQRコード決済の導入も進めている。また、海外からの輸入が多いために為替相場の変動による調達コストの増加は、大きなリスクである。
 そのような100円ショップの経営目標をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで書いてみると、以下のようになるのではないか。読者の意見を待ちたい。
<財務の視点>売上高の増大、営業利益の増大、1商品あたりの粗利の増大
<顧客の視点>来店者のリアル店舗購買満足度向上、誘致先満足度増大、若い世代の来店増加
<改善プロセスの視点>来客数増大、若年世代向商品充実(割安でおしゃれな商品など)、節約志向対応商品・顧客価値の増強、人件費抑制施策実践(レジ業務省力化など)、為替変動リスク対応策実施(調達コストなど)
<経営及び組織・個人能力の視点>ドラッグストアなどのベンチマーキングによる成長シナリオの見直し

 (出所:日本経済新聞、2019年7月13日、11面)

 

経営に資するISOマネジメントのリスクと機会を再考する

 経営者の視点に見る「経営に資するISOマネジメントとリスク・機会」について考えてみたい。日本品質管理学会の公開セミナーのひとつに、「クオリティトーク」という会合がある。日本科学技術連盟の高円寺ビルで夕方から夜にかけて開催されるのだが、軽食を食べ一杯ひっかけながら講演者の話しを聞くこの会合には、筆者も何回か足を運んだことがある。いくつかのテーブルに分かれて着席し、席は指定されるため、毎回ちがったメンバーの方々と知り合う機会を得るのも、異業種交流の場として、なかなか良いものである。
 いままでに出席した会合のテーマは、ISO31000のリスクマネジメント(野口氏:横浜国大)、因果と相関の関係(同じ横浜国大の先生だったと記憶している)、そしてISOマネジメントシステムを経営の視点で講演されたテクノファの青木社長の話しである。その青木社長の講演(第110回クオリティトーク)の概要が、『品質』に掲載されていた。ビジネスエクセレンスモデル(経営品質賞)のフレームワークを実践してきた方々には、もっともな話だと合点をする講演内容であったろうが、その掲載文では、「リスクと機会」に青木氏の経営者としての想いが表れていると感じた。
 同氏の掲載文を再度見てみると、「事業運営をする上ではリスクはつきものである。一方で事業運営のことを意識すればするほど,先に考えるべきことはリスクではなく機会の方である。特に営利企業であれば収益獲得が常に求められる中で事業機会がどこにあるかを常に意識し、その機会から成果を挙げることは必須である。規格では、リスクおよび機会、という語順になっているが、その順番にとらわれすぎないことである。筆者(青木氏)は経営者という立場もあることから、日ごろの思考においては機会の方に9割以上の意識を向けているといってもよい。そのうえでその機会を追い求めていくにあたってその機会の裏に潜むリスクは何かという捉え方をしている。組織内での職位が上になればなるほど、規格の読み解き方は字義通りではなく,自組織の経営管理を考えた応用動作をしていってほしい。」と述べている。
 ISO31000(リスクマネジメントの指針)に深く関わってきた野口氏によれば、リスクマネジメントは、未来の指標を創ることであると、喝破している。とすれば、青木氏の言う「機会を追い求める意識が90%」というのも、経営者にとってみれば、ごく自然な想いであろう。一方、ISOマネジメントの現場では、規格の読み解きを論じている場面が多く見られる現実を見ると、やはり日本では真に経営に資するISOマネジメントシステムの構築と運用は難しいのかなと考え込んでしまうが、いかがであろうか。

(出所:青木恒享「経営力向上のためにISOを使いこなす方法ー認証取得は目的でなく経営の選択肢ー」『品質』日本品質管理学会、Vol.49, No.3, 2019、p.39)

全体最適化経営の視点から見る価値連鎖全体の価値創造の最適化

 近頃のメディアや論文では、題名にAIというキーワードを使った記事や執筆が多く見られるのは、昨今の時流というべきものであろう。最近も、一般社団法人日本品質管理学会の学会誌『品質』を眺めていたら、「サービス工学xAIと品質向上」というタイトルの招待論説が目に飛び込んできた。その中で興味を引いたのは「価値連鎖全体の価値創造の最適化」という項で、全体最適化経営の視点から、その内容に惹かれた。
 執筆者の岡田氏によれば、三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)を考えてみると、「買い手よし」の重圧が強すぎる為、売り手の疲弊・低生産性が起こることがしばしばあるという。つまり、顧客価値創造のみに近視眼的になりすぎると、従業員価値や社会価値がないがしろにされてしまうリスクがある。そして、三方よしの実現が困難な理由として、個別企業と当該企業が関与する価値連鎖との相対的な関係性が変わってきたことを、この論文の執筆者は指摘している。
 多くのサービス産業で、一社完結型の価値連鎖を構築することは困難になり、むしろ、当該サービスの価値連鎖は長く、多種多様な利害関係者との連携や協調が欠かせない時代になっているという。もしそうであれば、我が国のサービス産業は、伝統的な産業・業界による区分と競争という視点だけではなく、産業・業界を超えたサービス価値連鎖単位での協調と最適化の視点も重要となると述べている。そして、産業・業界を超えたサービス価値連鎖単位で、AI時代の新たな三方よしの在り方を、考えていくべきであるとしている。
 さらに、個別企業による三方よしの実現が困難であり、従業員価値や社会価値がないがしろにされてしまうリスクが生じている典型例は、日本の物流価値連鎖であるという。物を届けるという社会的機能は欠かせないものであるが、現代の物流は、運輸業・倉庫業から宅配業・小売業を含む価値連鎖全体として消耗し、疲弊し、脆弱になっている社会課題に対して、筑波大学は他の組織と連携し、「サービス工学xAI」の連携体制を構築し、日本の物流価値連鎖の強化に貢献する研究開発を実施することにしたとある。
 「買い手よし」の過度な重圧が再配達問題などのサービスシステムの非効率性を生み出していること、過剰な対人接客による売上最大化(売り手よしではなく、売れればよし)に囚われすぎている現状、などにスポットを当てている。
 以上、個人的な勉強のために、抜き書きさせていただいた。

(出所:岡田幸彦「サービス工学xAIと品質向上」『品質』日本品質管理学会、Vol.49, No.3, 2019、pp.7-8)

エレコムの高速開発経営に見るBSC的考察

 デジタル周辺機器を主力ビジネスとするエレコムが、関連する30製品のうち13分野でトップシェアを握った。勝率4割を可能にするのは、年4千もの新製品を世に出す高速開発と、メール1本で開発に着手し、不振なら直ぐに生産中止し、製品群の3分の1を毎年捨てる新陳代謝により、目まぐるしく変化する市場を生き抜く。同社の経営をBSCの4つの視点の因果関係でまとめてみると、以下のようになるだろうか。読者の意見を待ちたい。

<財務の視点>
①ビジネスの成長:2020年に1千億円の達成、②売上高営業利益率:10%以上達成
<顧客の視点>
①かゆい所に手が届くという顧客の評価向上、②まずは世に出し、市場で売れなければすぐにやめる経営、③ヘルスケア分野などでのB2Bビジネスの拡大、⓸海外ビジネスの拡大
<変革プロセスの視点>
⓸ファブレス(製造委託)による迅速で低コストな製品製造の実践
③メールによる開発企画書の迅速な役員決済システム「メール上申制度」の導入
②開発部隊による1日平均10件以上/人の新製品開発の実践
①営業から得た顧客の要望に基づいた新製品開発と迅速な店舗への提案営業
<経営や・組織・個人能力の視点>
⓸開発担当者の新製品開発企画書作成スキルの向上(商品化の情報収集と精査)
③開発制度を高めるデータ収集システムの運用(主要量販店20社の販売データによる顧客ニーズの把握)
②営業力の強化(量販店員から顧客の要望情報を吸い上げて開発部門へ伝達)
①経営方針の理解浸透(やめることを恐れない高速な新陳代謝で時代への即応力重視)


(出所:日本経済新聞、2019年8月9日(金)、12面)

月刊アイソス10月号から連載記事を執筆します

◆マネジメントシステムの専門誌「アイソス」10月号からスタートする新連載
「桜美林大学のISOマネジメントシステム・コーディネーター養成プログラム」を紹介します。「ISOマネジメントシステム・コーディネーター」とは、ISOマネジメントシステムを利活用し、経営者の立場に立ち、経営の視点を持ってマネジメントシステムの企画・構築・運用・改善ができる人財のことです。今回の連載では、6回にわたり、桜美林大学の大学院経営学研究科及びビジネスマネジメント学群の教授陣並びに企業経営者が、桜美林大学大学院が目指すISOマネジメントシステム・コーディネーター養成のプログラムを紹介します。
連載各回のテーマと執筆者は下記のとおり。
10月号:第1回「ISOマネジメントシステム・コーディネーター養成プログラムの全貌紹介」
・執筆者:高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
11月号:第2回「財務目標を達成する非財務成果実現のマネジメントシステム設計論」
・執筆者:杉山大輔(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
・高橋清(エンライト株式会社代表取締役社長)
12月号:第3回「マネジメントシステムを経営戦略に結びつける」
執筆者:坂本雅明(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
1月号:第4回「マーケティング活動を経営成果に結びつける」
執筆者:宮本文幸(桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授)
2月号:第5回「リスクマネジメントの仕組みと活動を経営成果に結びつける」
執筆者:高橋義郎(前掲)
3月号:第6回「マネジメントシステムによる経営課題解決の提案書を作成する」
執筆者:高橋義郎(前掲)・原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)

(出所:「アイソス」のメルマガ記事より)

 

『街道をゆく 21 芸備の道』を読んで

 まだ広島空港が市内に近い場所にあったころ、仕事で広島県の三次(みよし)市へ出張する機会が何度かあった。三次へは広島駅から芸備線で行くか、あるいは車で移動することもあった。仕事の合間に鳳源寺(ほうげんじ)にも立ち寄り、赤穂義士、大石良雄が手植えしたという枝垂桜がある庭も見た記憶がある。霧が湧き出る地形でもあり、三次は霧の町とも呼ばれる。そのせいか、三次浅野家の代々の当主が病気で若死にするために長くは続かなかった。若死の原因は、結核であったという。
 三次への街道沿いに吉田町があり、毛利元就が居城の郡山城を築いたところである。彼は政治の要諦として、「其の人を侮るものはその土(くに)に君たらず」ということを常に言っていたという。そのような政治姿勢のためか、当時の安芸門徒への対応も悪からず、その政治姿勢は経営の視点からも注目して良いと思われる。元就が毛利家を相続して以来、大きな勢力を持っていた尼子氏が元就を攻めつぶす最悪の事態に備えるために、元就はあらゆる手を打っていた。その基本方針を支える基調となる要素は、領民撫育と一郷団結主義であった。元就の領民撫育は徹底していて、「いっそ農民と一緒に」という思想が最初から元就にあったと言われている。具体的には農民に対し、領主と運命を共有する意識を持たせることであったが、それを実践することは、なかなか難しいことであったろう。
 事実、元就は、尼子の大軍が来襲したとき、領内の農民とその家族をことごとく郡山城の中に収容してしまった。このことは、かれの撫育策が本物であったことを示している。元就の戦略は、まず山城である郡山城に閉じこもり、来襲軍が疲労するのを待ち、その間、彼が臣礼をとってきた大内氏から援軍を仰ぎ、その到着とともに尼子軍の労を打つというもので、弱小の領主が、山陰・山陽の兵をこぞってやってくる尼子氏と対抗するには、それ以外になかった。元就は、郡山城主になったときから、この型を考え続けてきたのであろう。そのためには、農・商と一つにならねばならない。その功利性が、やがて元就の基本的な政治思想になっていき、山陰・山陽を覆う勢力になってからも変わらなかったと、司馬遼太郎は書いている。
 三次への出張時に吉田へ立ち寄ろうと何度も思ったが、結局、その想いは叶わなかった。いまになって思えば、誠にもったいないことである。

(出所:司馬遼太郎(2013)『街道をゆく21<新装版>芸備の道』朝日新聞出版)

『すごい効率化』を読んで

 経営学や経営コンサルティングに関わっていると、「効率化」という3文字は魅力的である。同書を読み始めたのは、そんな背景からで、すなわち、書名に惹かれた。
 同書は、その執筆者の経験から体得された効率化のノウハウが、副題に書かれているように、最少の時間と労力で最大限の成果を14日間で出すプログラムで構成されている。目次を見てみると、決まった場所と時間を作る、パソコン環境を徹底的に整える、操作・入力をほぼ自動化する、時間を断捨離する、CAPDでまず検証する、頭が良くなる箇条書き記録法、しないことリストを作る、自分だけではなくチームで効率化する、50%で見切り発車する、超効率・情報収集術、超効率・時間管理術、睡眠を極める、食事や運動にこだわる、コミュニケーションを極める、などの14項目である。
 この中で、筆者が興味を持って読んだ目次の項目は、CAPDという考え方である。PDCAで計画を立てることから始めるのは、非常に危険だというのである。その理由は、まだやっていないことは、そもそも有効な計画が立てられないからだという。例えば試験の結果から原因や評価・検証をし、A(改善)をして、もう一回やり直す。なぜ点が低かったのか、不合格だったのかをC(評価・検証)をしてからA(改善)をし、その後にP(計画)とD(実行)をするサイクルをスタートさせるべきというロジックだ。
 もうひとつの項目は、人に何かを頼まれたときは、どんなにいきなりでも、自分の仕事で忙殺されていても、まずは全体の流れが止まるかどうかを見極めて、止まるくらいなら、そちらを優先するという思考が大切としている。言い換えれば、基本的に他人からの仕事を優先的にやるべきと主張している。全体の流れを止めてしまうことは、結果的に非効率だと理解すべきと書いている。
 いずれにしても、意志を強固にし、欲求や行動をコントロールすることが可能となれば、飛躍的な成長を遂げられると著者はいう。思考が変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり、習慣が変われば結果が変わり、そして、結果が変われば未来が変わる。14日間のプログラムで、未来が変わるのであろう。

(出所:金川顕教(2017年)『すごい効率化』KADOKAWA)

『ビジネス・フレームワークの落とし穴』を読んで

 フレームワークと理論とは何が違うのか、という質問をよく受ける。フレームワークは日本語で「枠組み」だが、モノゴトを考える際に、考えや思考を整理するのに役立つ手法と話したりしている。良い経営をするためには、「LOGIC x MAGIC」が必要で、失敗しない経営をするためにはLOGICが必須であるが、成功するためにはMAGICも必要だと同書の著者は言う。フレームワークは、このうちLOGICを強化するのに有効である。そして、フレームワークを利活用する際には、ただフレームワークの枠を埋めて満足するのではなくて、「だから、どうなの?」の分析や戦略立案へとつながっていかないと、そこにフレームワークの落とし穴があるという警告の書と理解した。
 同書には様々なフレームワークが紹介されているが、馴染みのあるものに、SWOT分析と5つの競争要因がある。このうち、SWOT分析については、「やりたい人の主観を、客観的に見せるためのフレームワーク」としている。実際には「やりたい戦略」が先にあって、上司やトップ・マネジメントを説得するために作られるのがSWOT分析と述べている。なぜなら、主題のないSWOT分析は作れないからだという。SWOT分析は、社内説得用のフレームワークとして、今日でも多用されているということになるのだろうか。
 もうひとつの「5つの競争要因」については、ポーターが、業界の利益率が高いか低いかは、5つの要因を分析すれば明らかになると説いたからだという。同書では、日本の企業が新たに一般消費者向けの旅行会社を設立し、旅行業界に参入するケースを想定して、予想される利益率を考える事例を紹介している。その結果として、5つの競争要因から判断する限り、新規に旅行会社を設立したとしても、普通の参入の仕方では、高い利益率は望めないことを予想しているのである。5つの競争要因を分析して、利益率が低ければ参入をあきらめるか、どうしても参入するのであれば、他社が追随できない差別化をして、独自のポジションを占める戦略を構築しないと、成功は難しいということになった。
 そして、この項の文末に、企業では、5つの枠を埋めて戦略を提案する根拠としている例が少なくないが、埋めることで満足し、「だから、どうなの?」の分析まで踏み込んでないケースが散見される、という上記の教訓を記していた。山田氏の言うとおりであろう。


(出所:山田英夫(2019)『ビジネス・フレームワークの落とし穴』光文社新書)

 

「なぜ大国は衰退するのか-古代ローマから現代までー」を読んで

 企業と同様に、大国にも栄枯盛衰の流れがある。それは一体何なんだろうか。書店でこの本を見たとき、そんな思いを持って同書を買ってしまった。日系ビジネス人文庫で、著者はグレン・ハバードとティム・ケイン。訳者は久保恵美子とある。目次に目を通していたら、すぐさま目に飛び込んできたのが「大国が不均衡に陥る標準的パターン」である。それは、
①「限定合理性」:理想的な経済政策を選択する支配者の能力に限界のあることを意味する。
②国民の「アイデンティティー」は、経済成長や国力に欠かせない強力な文化的・政治的・経済的制度の形成を促すが、政治的アイデンティティーは分極化や停滞の大きな要因である。
③「損失回避」によって、指導者らが何かを革新することはまれになる。
⓸「時間選好」の概念も重要で、当局者な改革の必要性を認識していても、求められる改革の実行を遅らせ、有権者も痛みを伴う現在の選択を避けようとする。
といった内容であった。
 本書では、ローマ帝国、中国、スペイン、オスマン帝国、大英帝国、ヨーロッパ、カルフォルニア、米国、そして日本を取り上げているが、それぞれの文末に、転換点(年)、経済的不均衡、政治的な原因、行動面での機能不全などについて、まとめた衰退の概要が各章末に書かれている。ちなみに、日本の衰退の概要には、転換点は1994年、経済的不均衡は財政面・構造面、政治的な原因は、特定利益集団や中央集権的な官僚制に比べて脆弱な民主制、行動面での機能不全は、新重商主義を経済成長策とするヒューリスティック、大規模な銀行や企業による損失回避、などとなっている。
 第8章「日本の夜明け」は、西洋のチェスとよく比較される日本の囲碁の紹介から始まり、日本の近代及び現代の歴史と囲碁の対局とを比較して、両者が似ているとしているのは興味深い。そのため、日本の台頭と衰退の物語は、囲碁のように3部に分かれるという。その第1部は1860年から1905年の急速な近代化の時期で、囲碁でいう「布石」。第2部は、1980年代までの国家管理型の資本主義という制度の成功が裏付けられ、「手筋」にあたるもの。そして第3部は1990年以降の失われた年月で、囲碁では「後手に回る」ことを余儀なくされた時期を示すらしい。いずれにしても、なかなか読みでのある本であったが、筆者にとっては、やや手に余る本であった。

(以上)

岩槻の「ほてい家」に見る江戸料亭の粋

 住まいから車で30分ほど北へ向かって走ると、ひな人形の産地として有名な岩槻に着く。さらに、国道16号から岩槻駅への道を数分行くと、右手に老舗料亭「ほてい家」の黒い長屋門が見えてくる。長屋門は歴史を刻んだ姿で建っているためか、入るには少し勇気が必要だったが、それは無駄な杞憂であった。妻と一緒に初めて「ほてい家」の黒門をくぐったのは、もう10年近く前になるだろうか。確か、2011年3月の東日本大震災直後にも店を開いていて、震災の影響が冷めやらぬためか、来客がいない客席に妻と一緒に食事を楽しみに訪ねた。震災後早々にもかかわらず客を待っていたのは、老舗料亭の心意気というものであったろう。 
 岩槻(岩付)の名が歴史上初めて登場するのは、「長谷河親資着到状」という古文書のなかで、室町時代初期の永徳2年(1382)のことだという。江戸時代まで岩槻周辺には利根川(現・古利根川)、荒川(現・元荒川)などの大河が流れ、また東北地方に通じる主要な街道が通るなど水陸交通の要衝だった。このため、岩槻は軍事上の拠点として時の有力武将から重視され、城が築かれた。そして、江戸時代に日光東照宮が造営され日光社参が始まると、日光御成道が整備され、城下町、宿場町として、岩槻は武蔵国東部の中心地として大いに栄えた。(同市HP)
 ほてい家は、この江戸の頃に創業した伝統を今に受け継ぐ老舗料亭で、近世、近代には「布袋屋」と書き、岩槻藩主大岡家中の江戸藩邸詰めの武士が岩槻に来ると布袋屋でもてなしたと「日記」に記されているという。埼玉県営業便覧(明治35年)には「蒲焼御料理 布袋屋」と記されているらしい。大正期には「布袋屋の茶碗蒸し」が鰻とともに人気を博した。(同家HP)
 筆者は、ほてい家の玄関を入るのが好きである。ドアが開き中へ入ると、料亭独特のかほりを交えた空気が私たちを包んでくれて、そこでは江戸の粋や雅を感じさせてくれる非日常の空間に浸れることができるのである。料亭の皆さんのもてなしも快いもので、老舗料亭の格を上げているといえる。昨日も妻の買物とドライブを兼ねて岩槻へ行き、ほてい家さんの長屋門をくぐろうとしたが、繁盛の証か、駐車場がいっぱいで諦めた。そもそも、老舗料亭でゆったりと江戸の粋と味を堪能するには時を選ばねばならず、やはり少し遅めの昼食が良さそうである。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群生産管理論(14回目)整理演習回答例

◆「ねぎし」「Q(クオリティ)提供のプロセス」のKPIの一例
①ビジネスパートナー
・KPI:発注した食材や資材の納期遵守(98%以上)
・測定:仕入れ納期を守った発注件数÷全発注件数x100<98(%)
②仕入担当
・KPI:誤発注を前年より50%削減
・測定:今年の誤発注件数÷昨年の誤発注件数x100<50(%)
③セントラルキッチン
・KPI:廃棄ロスを前年より50%削減
・測定:今年の廃棄ロス量÷昨年の廃棄ロス量x100<50(%)
⓸店舗
・KPI:注文へのスピード提供を100%実現
・測定:〇〇分以内に提供できた注文数÷全注文数x100(%)

桜美林大学「第3回マネジメントシステム・コーディネーター養成講座(2019年8月)」開催案内

◆講座の概要
国際標準、ISOマネジメントシステム、経営品質、バランススコアカードなどのマネジメントシステムを利活用し、経営者の立場に立ち経営の視点を持ってマネジメントシステムの企画・構築・運用・改善ができる人財の育成や、中小企業の次世代事業継承者の能力やスキルを向上させるプログラムを提供。大学院経営学研究科とエクステンションセンターが企画・運営し、修了者には、桜美林大学長が修了証を交付し、本学認定資格「マネジメントシステム・コーディネーター」が取得できます。

◆開催要領
・定員:10名(最少開講人数5名)
・受講料:150,000円(消費税込み、講座開催中の昼食付)
・日程:2019年8月14日(水)~21日(水)(土日を除く6日間の集中講座)
・会場 :桜美林大学新宿キャンパス(最寄り駅:JR大久保駅、新大久保駅)

◆募集要領
・応募資格:ある程度の企業勤務経験や経営知識を有すること。
・講座のお問い合せ先:大学院経営学研究科(担当:高橋)
           ℡:090-3964-7431、e-mail:ytakaha@obirin.ac.jp
・講座のお申込み先 https://www.obirin.ac.jp/extension/school/yotsuya/course/biz/Y19900.html

◆主な講座内容
・講義プログラムや講師、諸事情により一部変更されることがあります。
・括弧内は予定担当講師の皆様です。
・時間割:①8:50-10:30, ②10:40-12:20, ③13:10-14:50, ④15:00-16:40, ⑤16:50-18:30

Ⅰ.1日目(8月14日) 『マネジメントシステムの新潮流を理解する』
①開講、オリエンテーション、MSコーディネーターと全体最適化経営論(桜美林大学大学院経営学研究科長、大学院教授陣) 
②グローバルな視点から見る国際標準化とマネジメントシステムの新潮流(経済産業省様)
③国際標準化戦略の新潮流と対応する人財育成(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣) 
④ISOマネジメントシステムの新潮流(日本マネジメントシステム認証機関協議会様)
⓹経営品質向上マネジメントシステムの新潮流(日本経営品質賞連携講師様)

Ⅱ.2日目(8月15日) 『財務目標を達成する非財務成果実現のマネジメントシステム設計論を理解する』
①経営及び財務分析とマネジメントシステム論(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣)
②バランススコアカードの利活用によるマネジメントシステム強化論(同上)
③財務目標を達成する非財務目標及び成果を実現するマネジメントシステム設計論(経営品質協議会連携講師様)
④同上:主要な理論と手法の理解(同上)
⓹同上:理論と手法を用いた演習と成果共有と解説(同上)

Ⅲ.3日目(8月16日)『マネジメントシステムを経営戦略に結びつける』
①ビジョナリー経営と戦略マネジメント関係論(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣)
②経営戦略策定とマネジメントシステム(首都大学非常勤講師・富士ゼロックス総合教育研究所様)
③同上:主要な理論と手法の理解(同上)
④同上:理論と手法を用いた演習(同上)
⑤同上:演習成果の共有、解説、総括(同上)

Ⅳ.4日目(8月19日)『マーケティングとリスクのマネジメントの仕組みと活動を経営成果に結びつける』
①マーケティング戦略とマネジメントシステム(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣)
②同上
③リスクマネジメントを経営の成果に結びつける(同上)
④同上
⑤同上

Ⅴ.5日目(8月20日)『ケーススタディによる演習「マネジメントシステムによる経営課題解決の提案書を作成する」
①経営課題解決提案書作成とコーチング(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣)
②同上
③発表:経営課題解決提案書の発表と講評(同上)
④同上
⑤最終課題説明、事例解説、課題取り組み開始(同上)

Ⅵ.6日目(8月21日) 『最終課題:マネジメントシステムによる経営課題解決の提案書を作成する』
①5日間の講座の振り返り(桜美林大学大学院経営学研究科教授陣)
②経営課題解決提案書作成とコーチング(同上)
③発表:経営課題解決提案書の発表と講評(同上)
④同上
⓹総括「振り返り、総評、修了書授与、閉講(同上)

(以上)

桜美林大学ビジネス科学研究所開設記念講演会(7月6日無料)開催のお知らせ

桜美林大学は、2019年4月1日より新宿に新しいキャンパスを開設し、ここにビジネスマネジメント学群と大学院経営学研究科が移転しました。これを契機に、経営学研究科にMBAプログラムを開設し、合わせてビジネスをめぐる基礎的な諸問題を科学的に研究し、成果を実務での実践の観点を交えて再構成し、広く社会に発信することを目的とした桜美林大学ビジネス科学研究所を設置しました。つきましては、その開設記念講演会を無料開催することにいたしますので、ご案内いたします。経済産業省国際標準課長の黒田浩司氏からは、(仮題)「我が国における国際標準化の重要性と競争力強化の取り組み」という演題でご講演いただきます。ご多忙とは存じますが、万障お繰り合わせのうえ、ご来場を賜りますよう、お願いいたします。

◆名称: 大学院経営学研究科ビジネス科学研究所開設記念講演会
◆日時: 2019年7月6日(土)13時~17時
◆会場: 桜美林大学新宿キャンパス(JR大久保駅・新大久保駅下車)
       (住所:東京都新宿区百人町3-23-1)
◆主題: ボーダレス時代の経営に向けたパラダイムを探る
◆プログラム    
1.基調講演「世界経済の動向と令和の経営」
      13:10 矢野 誠氏(経済産業研究所所長・上智大学特任教授)
2.第一部「企業の体質と競争力の強化に向けて」
      14:00 ①久保利英明氏(日比谷パーク法律事務所代表弁護士) 
      14:40 ②黒田浩司氏(経済産業省産業技術環境局国際標準課長)
3.第二部「パネルディスカッション・新時代の経営実践と課題」
      15:30 ①基調講演 竹内成和氏 (みらかホールディングス代表取締役社長)
      16:00 ②パネルディスカッション
      境 睦(桜美林大学大学院経営学研究科長)
      竹内成和氏(上掲)
      阿部直彦氏(ペイ・ガバナンス日本代表取締役・本学客員教授)
◆参加費: 無料
◆お申込み先: https://forms.gle/kbd1mEdWMpMq9UbUA
◆お問合せ先: 桜美林大学・総合研究機構・ビジネス科学研究所
           電話:03-3366-0125

皆様のお申込みを、弊学教職員一同、心よりお待ち申し上げております。

高橋 義郎
桜美林大学大学院
経営学研究科(経営実践分野国際標準クラスタ―)教授
ビジネス科学研究所国際標準化研究センター長
(e-mail) yosiro-t@cb4.so-net.ne.jp、 ytakaha@obirin.ac.jp
(℡)090・3964・7431、