高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

豪雪の地で小説『峠』を思う

 2月になって、新潟県上越市の直江津に行く機会があった。今年の冬は、日本海側の各地で豪雪が記録され、上越地方でも一晩で1メートルの積雪があったことが報じられていた。現地では、除雪作業があちこちで行われていて、ホテルに迎えにきてくれた方は、春になれば溶けてなくなるものなのだから、無駄な仕事ですよね、などと話されていた。確かに、雪国は大変だ。
 今回の豪雪に出会ったからというわけではないが、雪国ということばを聞くと、いつも思い出す小説が、司馬遼太郎の『峠』である。幕末の長岡藩で生まれ育った河合継之助の物語で、その小説に登場する場面や言葉が、おぼろげながらも記憶に刻み込まれている。
 そのひとつが、「雪国は損だ」という河合継之助のつぶやきである。もし雪がなければ、防雪や除雪に費やされる膨大な労力と費用は無用になるのである。ましてや、江戸時代の話しとなれば、人々は移動する手段を持たず、交通は遮断され、孤立することもあろう。豪雪の現地にいて、除雪する人々や機械の動く姿を見て、改めて膨大な無駄という現実を痛感する。
 河合継之助といえば、「石という知識を、心の炎で溶かす」という、塾の後輩に話す言葉も、印象に残っている。じつはこの言葉は、『峠』を読んで知ったのではない。筆者がまだ20歳代のころ、勤務していた会社の社員研修で、当時の営業部次長のN氏が研修冒頭の挨拶で紹介したものであった。じつに河合継之助らしい言葉ではないか。書物に限らず、物事をじっくりと考えて、行動に移す、知識、見識、胆識の3識を具現化する心意気が伝わってくる。思い起こしてみると、筆者が司馬遼太郎の著作物を読み始めたきっかけとなったのは、この研修を受けてからかもしれない。
 そして、3つ目が、江戸留学を申し出る継之助が家老に向かって叫ぶ「人間をご存じない」というものである。勉強をするなら、なにも江戸まで行かなくても、長岡で十分できるはずという家老の説得に対して、投げつけるように言う言葉である。うまく説明をすることができないが、筆者を深く印象づけるものとして、いまでも折に触れて思い出す。
 見るだけであれば雪は美しい。しかし、多くの人々の生活を阻害する要因にもなる。物事には、常に表の顔と裏の顔があるということであろう。

(以上)

「残酷すぎる成功法則」を読んで

 いろいろなことが書かれている本である。エリック・パーカー著、橘玲監訳、竹中てる実訳のこの本の副題は、「9割まちがえる「その常識」を科学する」、とある。一読させていただいた中で、関心を持って箇所を抜き書きしてみたい。
 まずは海賊船について、すこぶる民主的なところだった、という話から始める。その理由として、すべての規則は全員一致で承認されること、船長は何かの理由で罷免されるので「しもべ」のような存在に近づいたこと、船長が全権を掌握できたのは生死に関わる即断を強いられる交戦中のみだったこと、を挙げている。海賊は、人々が喜んで働きたくなるような「会社」を形成していたのだ。他の船員と比べて船長の給与や生活環境も大きな差はなく、報償制度、福利厚生、手当、人種的多様性が整い、海賊は人材の補充に苦労しなかったという。片や、英国海軍は兵士を確保するために強制的な徴兵に踏み切らざるを得なかったらしい。海賊の統治法は、船員に十分な秩序と協力関係を行き渡らせ、それにより海賊は、史上最も洗練され成功した犯罪組織になったようだ。経営品質の考え方にもつながる事例であろう。
 ふたつ目は、楽観主義の薦めといったことである。楽観主義は、健康状態を良くし寿命を延ばすこと、成功を期待しながら交渉に臨むと結果に満足できる可能性が高まること、そして、楽観主義者は幸運に巡りやすくなり、ポジティブに考えることでものごとを辛抱強く取り組み、自分により多くの機会をもたらすことができること、などに触れている。しかし、楽観的であれば良いというものではないようで、正確性においては悲観論者のほうが高いとも言っている。心に留めておきたいところだ。
 三つ目は、ドラッガーの言葉に言及していることである。ドラッカーは、時間が最も希少な資源と考え、自分の目標を達成するうえで、その進捗に寄与しないすべてのもの断つことを人に薦めていたという。すべての事業、すべての活動、すべての業務を絶えず見直し自問し、確実に自分の仕事や組織のパフォーマンスに結果をもたらす限られた数の業務に集中できるようにすることの重要性を唱えていたのだ。数年前に本の出版を決意しながらも、だらだらと時間ばかりが過ぎていく筆者には、耳の痛い教えである。また、この考えは、全体最適経営のフレームワークにもつながるものであろう。
 最後に自戒を込めて「固定スケジュールによる生産性」を記しておきたい。所用時間を全く考慮しないTo Do Listを作るより、すべてを予定表にすることが、現実的で有効な唯一の方法であることを強調していることは、目から鱗といった驚きを持って読んでみた。そして、自分だけの時間を作り、バッチ処理で業務をこなすことがポイントだそうだ。だらだら行う仕事よりも、もっとメリハリのある仕事の作法があるんだよ、という囁きが聞こえてきそうな下りである。

(以上)

「CSVは文法」について考える

 今年度の修士論文指導のなかに、CSV(Creating Shared Value)に関するテーマについて論文を書いている院生がいる。しぜん、CSVを扱った書籍や論文に目が向くのであるが、その中の一冊が、『CSV経営とSDGs政策の両立事例』(近藤久美子著、ナカニシヤ出版、2017年10月)であった。そういえば、前述した院生も、彼の論文にSDGs(The Sustainable Development Goals)の大分類と17目標を事例各社のCSVの取り組みと対比させながら、CSV活動やKPIの妥当性の分析を進めていた。
 近藤氏の冒頭の一節に、同氏の前書『企業のコミュニケーション能力:仕事は単語、キャリアは言語、CSRとCSVは文法』(近藤2013)が紹介されている。このタイトルは、筆者の目を引いた。たぜならば、この言い回しをマネジメントシステム(MS)やビジネスエクセレンスモデル(BEM)、それにバランススコアカード(BSC)のフレームワークに照らし合わせてみると、「目標や行動は単語、戦略やBSCは言語、MSやBEMのフレームワークは文法」と言い換えることができると考えたからである。同氏の提唱を使わせていただくと、フレームワークを文法と解釈することは、MSやBEMを展開し運用している現場の理解が得られやすい、優れた表現だと感じた。
 近藤氏の書籍のなかで展開されているテーマは、「共通価値の創出パターン分類」と名付けられたフレームワークである。マトリックス図で4つの領域を区分し、縦軸はCSV事業の対象者で、上部がB2B:対法人、株がB2C:対個人と定義している。また、横軸はCSV事業領域で、左側がSDGs多い(職務拡大)、右側がSDGs少ない(職務充実)となっている。それぞれの領域について、各章で詳細な研究成果を述べられおられた。
 そして、CSVとSDGsのつながりにおいては、
・SDGsの該当数が少なくても、社会との共有価値を見出し、ビジネスとして成り立っていれば、SDGsの数は関係なくCSVであること。
・CSVとSDGsは同じ方向を向いているにもかかわらず、双方の距離感を縮める機会を模索中のプロジェクトは意外と多く、SDGsでは、企業の一層の参画が期待されていることへの認識が、まだ十分ではないこと。
などのご意見を披露されている。
 また、「CSV経営は、ブルー・オーシャン開拓のためと言っても過言ではない」とし、現在の日本のCSR活動が、レッド・オーシャン化していると喝破している。貴重な時間・費用・人的資源を投入しているにもかかわらず、他社との差別化が図られていないため、ソーシャル・インパクトに欠ける社会活動になっているのではないかというのである。SDGsなどの国際的は、今、私たちに何ができるのかを、問い掛けているように思えるという近藤氏の意見には、傾聴に値する思いがする。

(以上)

桜美林大学大学院経営学研究科「ビジネス戦略セミナー」開催のご案内

 2013年度から桜美林大学大学院経営学研究科に「国際標準化研究領域」が開設されて以来、本セミナーは、経営学研究科の活動と国際標準化の重要性を企業関係者および地域社会に広くアピールする目的で、毎年相模原市産業振興財団、相模原市・町田市と連携し、定期的に開催しています。第11回目を迎え、「国際標準を取り巻く最新動向と企業経営の課題」と題し、四谷キャンパス(千駄ヶ谷)にて半日のビジネス戦略セミナー(参加費無料)を開催します。どうぞお気軽にご参加ください。

◆日時
2018年2月15日(木)13:30~17:30(受付開始13:00)
◆場所
四谷キャンパス(千駄ヶ谷校舎)1階ホール(JR千駄ヶ谷駅下車、徒歩数分)
◆参加費
無料
◆定員
70名

◆プログラム
13:30 開会および司会
境睦 (桜美林大学大学院経営学研究科長・教授)
13:35 開会のご挨拶
小池一夫 (桜美林大学副学長)
13:45「国際標準化の新潮流」
・副題:標準化を巡るグローバル及び国内での動向(サービス領域を含む)
・講師:大塚玲朗氏(経済産業省産業技術環境局基準認証政策課)
15:10「中堅GNTのダイナミック・ケイパビリティ戦略:続編」
・副題:事例から学ぶ現状突破の条件と成功要因
・土屋勉男(桜美林大学大学院経営学研究科特任教授)
15:50「ファインバブル標準化の事例から学ぶ」
・副題:ファインバブルに学ぶ標準化の物語
・講師:原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
16:30「マネジメントシステム(MS)・コーディネーターの養成の意義と期待」
・副題:全体最適経営に資するMS人財育成とリスクマネジメントの新潮流
・講師:高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
17:10 質疑応答及び総括
境 睦(桜美林大学大学院経営学研究科長・教授)
17:30 閉会

◆お申込み
電子メールで高橋宛(ytakaha@obirin.ac.jp)にお申込み下さい。
当日の受付も可能ですが、資料準備のため事前のお申込みをお願いします。

皆さまのお越しを、心からお待ちしています。

(以上)

因果関係と相関関係について考える

 かねてより、経営の目標や施策における因果関係というテーマに関心を持ってきた。そのはじまりは、バランススコアカード(BSC)の4つの視点(財務の視点、顧客の視点、プロセスの視点、学習と成長の視点)における相互の因果関係の重要性について着目しはじめたことから始まる。
 バランススコアカードを作る場合、5つの留意点がある。一つ目は、設定されたそれぞれの目標は、組織や部門が最終的に達成すべき目標(例えば戦略目標、中期事業計画、等)の実現につながるように策定されていることである。ふたつ目は、4つの視点の因果関係が考慮されていること。三つ目は、重要成功要因の選択基準が明確であること。四つ目は、成果指標が重要成功要因の達成状況を正しく把握できること。そして、五つ目が、計画(企画)、実行、評価、結果のバランスと評価(PDCA)を行っていることだ。この中にもあるように、4つの視点間のみならず、戦略目標や重要成功要因同士の因果関係も、バランススコアカードのキーポイントといえる。詳細については、拙書『使えるバランススコアカード』(PHPビジネス新書)をご覧いただければ幸いである。
 因果関係をテーマに取り上げた書籍のひとつに、『データ分析の力、因果関係に迫る思考法』(伊藤公一朗著、光文社新書、2017年)がある。実際に読ませていただいたところ、筆者にとっては、難しい本の1つに挙げられるのではないかと感じた。これは、まったく筆者の勉強不足に起因するものであるが、その中で興味を引かれたのが、「因果関係は相関関係とは違う」という一節であった。同書によれば、2つのデータの動きに関係性があることを、統計学では「相関関係がある」と呼ぶ、とある。そして、問題は、たとえばXとYに相関関係があることがわかっても、その結果を用いて因果関係があるとは言えないこと、なのである。そして、現場のビジネスを考えた場合、物事を決定する際に鍵となるのは、多くの場合「因果関係」であり、相関関係ではない、ということを明確に示されている。いずれにしても、筆者が標榜するビジネスの世界では、やはり因果関係というものが、経営の意志決定を支援するひとつの目のつけどころであることは、間違いないのではないだろうか。
 ところで、同書から学んだことのひとつに、「ランダム化比較試験RCT)」がある。RCTは、同書の基本的はテーマであるからして、注目するのは当然の流れではあるが、たとえば、消費者をランダムにグループ分けして、介入グループと比較グループを編成し、介入グループに電力価格の変化を与えた結果と、変化を与えない比較グループの結果とを比較して、「もしも電力価格の上昇という介入がなかった場合、2つのグループの電力消費量の平均値は等しくなる」という仮定をみたすことができるかを、分析していくものと理解した。また、医療費自己負担額の大小で変化する月年齢別の外来患者の比較データや、税込価格を表示すると税抜き価格を表示した場合に比較して平均的にどのくらい売上が変化するのか、などの事例も、興味深いものであった。
 同書の著者である伊藤氏が、あとがきに『環境経済学への招待』(植田和弘著、丸善ライブラリー)という新書に感銘を受けたと書いている。筆者も、ぜひ読んでみたい。

(以上)

ナゴヤが生んだ「名」企業

 名古屋という地域は、名古屋人にしても企業にしても、独特の文化を感じさせるところである。その名古屋の企業について書かれた書籍(日本経済新聞社編(2017)『ナゴヤが生んだ「名」企業』日本経済新聞出版社)を読んでみた。
 書籍の「はじめに」には、「名企業」の由来は名古屋の「名」と、名門とか優れたという意味の「名」の掛け言葉であると、述べられている。地名をカタカナで「ナゴヤ」としたのは、対象企業を愛知、岐阜、三重のナゴヤ経済圏全体に広げようと考えたためだという。確かに、ナゴヤの企業の名鑑と思えるようなイメージの本に仕上がって、読んでいてナゴヤ地域の企業風土といったものが、読み手の体内に浸み込んでくる想いがした。
 貴重な事例や取材から、多くの学ぶべきことがあったが、なぜか、井村屋の話しが印象に残った。それは、コメ相場で失敗し、後がなくなった井村和蔵が、家庭で作られていた「あずき」の羊羹の効率的な製造方法を編み出し、それを継いだ長男の二郎が仲間たちと「株式会社井村屋」を設立し、即席ぜんざいなど「あずき」を使った新商品が市場から受け入れられた話からはじまる。個人商店から法人組織へと脱皮する重要な時期のことである。西洋的な発想と材料にとらわれていたアイスクリームの新市場開拓に苦戦していた中、「俺らの得意なあずきがあるやないか」と和菓子とアイスを融合した「あずきバー」が生まれた。また、肉まんは、冬になるとアイスのケースが空っぽになることに目をつけ、冷凍ケースの代わりにスチーマーを置き、肉まんを売り始めたのが、きっかけだったという。出来立て感覚で食べられる点が受けて、夏はアイス、冬は肉まんという、販売の平準化を果たした。この季節変動における販売の平準化は、多くの企業が持つ悩みであろうから、参考になるエピソードではないか。経営品質でいえば、ベンチマーキングになるところか。
 この連載を終えて編集部長の発田氏が回想していたことは、名企業の物語には、続編があるということだった。次世代の自動車産業、リニア中央新幹線のプロジェクトなど、ナゴヤの名企業の挑戦が今後の数十年で何を生み出すのか、その成否は日本経済の行方に大きな影響を与えるという意見には、賛成である。なお、個人的な気づきであるが、もし可能あれば、本書に「あとがき」を書き添えてもらえると良かったなか、と感じた。

(以上)

 

「あるべき姿」と「仮説・検証体験」

 新年に受け取った日経ビジネス誌(1月8日号)の巻頭言「有訓無訓」に、サッポロホールディングス会長の上條努氏が、『気持ちを素直に出して、おかしいと思えば変える、攻めてこそ人生は楽しい』というタイトルの談話を、披露していた。
 このコラムの中で気になった用語は、「あるべき姿」と「仮説を立てて実行し検証する」という2つのキーワードである。
 「あるべき姿」は、経営者のリーダーシップとして、組織の方向を示す場合によく使われる用語であり、「仮説→実行→検証」もマネジメントのPDCAとして頻繁に出てくる基本的なフレームワークとして考えられるものである。
 上條氏は、サンフランシスコ支店長時代に米国で総代理店の契約を結んでいる企業があり、その企業が米国各地の問屋に商品を卸していたことを振り返り、これではメーカーとして主体的にブランドをコントロールできないという問題を指摘した。
 ここで、「あるべき姿」が語られる。彼は、やはり同社(サッポロビール)が各問屋に直接商品を卸すのが「あるべき姿」であり、総代理店の契約は、やめようと思ったという。
 この提案に対し、東京の本社では、歴史ある取引を変更することを懸念したが、結局、押し切った結果、ビールの販売数量を全米で9割増やすことができたという。
 おかしいと思ったことは直す、という基本的な考えを持ち、思い切って仮説を立てて実行し、検証するという体験が、経営者としての自信を持たせることになったのである。
 その後、同社が直面する国内市場シェア低迷や、社員のモチベーション低下などの経営課題に直面する状況においても、その体験が役に立ったことであろう。
 新年にあたり、ビジネスエクセレンスモデル(経営品質向上のフレームワーク)におけるリーダーシップや方針と戦略に関連する「あるべき姿」と「仮説と検証」について、再考する機会ではあった。

(参考:上條努「有訓無訓」『日経ビジネス』2018年01月08日号、p.Ⅰ)

サービス業としての「ユニクロ」に見るBSC的考察

 ユニクロのホームページを見ると、「ユニクロのビジネスモデル」というページがある。R&Dからカスタマー・クリエーション・チームまでのプロセスを順番に解説したもので、製造小売り(SPA)も含まれている。その中で筆者の興味を引いたのは、「匠チーム」の存在だ。技術を伝えるだけではなく、工場で働く人々の生産管理に対する心構えを変え、より良い工場に成長させ、日本の優れた技と心を次世代の技術者へ伝承していく役割を担っている。ユニクロのホームページで紹介されている経営情報をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで整理してみると、次のようになろう。

〇財務の視点
・財務目標の達成
〇顧客の視点
・顧客満足(顧客のライフスタイルをつくるための価値提供)
〇変革プロセスの視点
・商品開発 ☞ R&D、マーチャンダイジング(コンセプト会議)
・仕入れ  ☞ 素材開発・調達(大量素材発注による競争優位、
       ヒートテックなどの機能性新素材共同開発、等)
・生産・在庫☞ SPA、在庫コントロール、売り切り売価戦略 
・店舗運営 ☞ IT化で生産性向上、品切れ防止、販売目標 
・集客・販売☞ マーケティング、Eコマース、顧客創造チーム
〇学習・成長の視点
・生産部・匠チーム(工場の課題解決、生産管理、技術伝承)
・働く人々のサービススキル・ヒューマンスキル向上
・経営理念・方針・戦略・行動規範・マネジメントシステム

 これらの重点目標について、もし自分自身が経営者だった、あるいは担当責任者だったら、どんなKPI(Key Performance Indicator)を設定して「うまくいっているかどうか」を測定し判断していくのだろうか。そんな想いを抱いて、3つのKPIについて考えてみたい。
①まず最初に「大量素材発注による競争優位」についてである。素材や部材を大量に発注すれば、当然単位当たりのコストは下がる。もし品質と納期が同じ条件であれば、他社と比べて安価なアパレル商品を市場に提供することができるから、競争に勝てる、すなわち競争優位なビジネスを進めることができよう。よって、もし筆者が調達の担当責任者であれば、KPIは「発注単位当たりの金額(コスト)」、計算式は「発注金額(¥)÷発注数量(または重量)x100(%)」とし、この数字が小さくなるように調達業務を進めていく。
②次は「品切れ防止」である。もし筆者が店舗運営の担当責任者であれば、KPIは「毎月の品切れ発生率」、計算式は「1か月での品切れ商品数÷全商品数x100(%)」でも良いし、あるいは単に「毎月の品切れ発生回数」でも良いだろう。店長は、それらの数字を小さくしていくよう改善に取り組み、機会損失(販売機会逸失)を無くし、顧客満足を高めることが必要だ。
③最後に、生産部や匠チームによる「工場の課題解決」は、KPIを「工場課題解決率」、計算式を「課題解決件数÷課題解決依頼数x100(%)」とし、これはだんだんと大きくしていくと改善されていると判断できよう。野球でいう打率と同じだ。このKPIの測定数字が限りなく100%に近づいていけば、生産部や匠チームのサービスを受けている社内顧客の満足度は高くなっていくし、感謝される彼らのモチベーションも高まっていくことは間違いない。
 KPIの設定は、その部署が置かれている状況や目指す経営目標によって変わってくる。よって、筆者が設定したKPIとは違うKPIが設定されることは十分考えられる。妥当性あるKPIを設定するには、「あなたのその仕事は、何のために行っているのか」によって決まるのではないか。

(以上)

桜美林大学大学院経営学研究科 第10回ビジネス戦略セミナー(9月11日・無料)

 本公開セミナーは、2013年度から桜美林大学大学院経営学研究科に「国際標準化研究領域」が開設されて以来、定期的に開催しています。このたびは第10回目を迎え、「国際標準を取り巻く最新動向と企業経営の課題」と題し、四谷キャンパス(千駄ヶ谷)にて半日のビジネス戦略セミナー(参加費無料)を開催します。今回は、「企業が知っておきたいマネジメントシステム、標準化、成長戦略の抑えどころ」についての紹介も行いますので、どうぞお気軽にご参加ください。

●プログラム
13:30~13:35  開会および司会~境 睦 (桜美林大学大学院経営学研究科長)
13:35~13:45  開会のご挨拶~ 小池一夫 (桜美林大学副学長)
<テーマ1:ISO認証の新展開>
13:45~14:30  ISO認証をめぐる最近の動向と課題(仮題)
・大塚玲朗氏(経済産業省基準認証政策課)
14:30~15:15 部分最適が組織を滅ぼす:全体最適化経営におけるマネジメントシステムと人材育成(仮題)
・高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
<テーマ2:競争優位の構築とDC戦略>
15:30~16:15 日米欧標準化戦争の真実(Suicaなどの事例紹介)
・原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
16:15~17:00 中堅GNTのダイナミック・ケイパビリティ戦略(現状突破の要因と条件)その2
・土屋勉男(桜美林大学大学院経営学研究科特任教授)
17:00~17:25 質疑応答及び総括~金山 権 (桜美林大学大学院経営学研究科教授)
17:25~17:30 閉会
 
●会場及び開催日時 
日時:2017年9月11日(月)13:30~17:30(受付開始13:00)
会場:桜美林大学四谷キャンパス(千駄ヶ谷)、1階ホール
参加費:無料
定員:70名
お申込み方法:下記までご連絡下さい。
(当日の受付も可能ですが、資料準備のため「事前のお申込み」をお願いいたします)
 
●お申込み先・お問い合わせ先
桜美林大学大学院経営学研究科 高橋まで (電子メール: ytakaha@obirin.ac.jp )
 
●共催・後援(予定)
共催:相模原市産業振興財団  後援:相模原市 及び 町田市
 
(以上)

本日の講演で紹介した「マネジメント計画書」をアップします

本日はご多忙のところ、相模原市産業振興財団様共催「桜美林大学大学院経営学研究科第9回ビジネス戦略セミナー」にご来場いただき、誠に有難うございました。「マネジメントシステムの落とし穴」で紹介した図表をアップします。ISO9001:2015年版の運用でのご参考になれば幸いです。

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(以上)

 

桜美林大学の専任教員になりました

早いもので5月も中旬に入りましたが、皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、このたび、私こと高橋義郎は、桜美林大学の専任教授職を拝命いたし、4月1日から着任いたしました。

これも、皆さま方からいただきましたご支援のおかげと、深く感謝いたしております。

今後とも、引き続きのご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

高橋 義郎

 

 

経営品質の散歩道(13) 『やさしい経営学』に見る理論と実践

 日本経済新聞社が編集した『やさしい経営学』という本がある。本棚から取り出して改めてパラパラとめくってみると、300頁近い紙面のあちこちにマーカーやメモをしたためた箇所が見られる。それほどにこの本を読み込んでいるかといえば、実はそうではない。ただ、いままで漠然とした知識として持っていた経営学の断片的なものが、活字を通して理論と実例が体系的に見えてきたという意味で、筆者にとって得難い書籍となった。

 同社の経済解説部が、その冒頭に「経営とは何か」と問うている。そこでは、どんな組織が求められているのかを根本から考える方法が学べるもの、とある。そして、その方法論は会社だけでなく、学校や団体など共通の目的を持ったグループ、あらゆる組織にもあてはまり、優れた経営、強い組織の動き方、特徴を理論的にまとめて、学びを活かせる形で示し、戦略論と組織論が二つの大きな柱となっている、と述べている。それらの内容を、野中郁次郎、伊丹敬介、藤本隆宏、御手洗富士夫、新宅純二郎、鈴木敏文、柳井正、沼上幹、加護野忠男、守島基博、高橋伸夫、他の経営学や経営の先駆者が書き語っている。

 仕事柄、やはり目についてしまうのはバランススコアカード(以下、BSC)や経営品質のフレームワークである。たとえば、この書籍には「競争力とは多面的・多層的な概念」という稿がある。その概念を解説した図には、競争力の多層構造として、組織能力→裏の競争力→表の競争力→収益性、といった因果関係が掲載されている。組織能力は、トヨタ方式など、裏の競争力は生産性など、表の競争力は価格など、そして収益性は売上高・利益率など、と注記されているが、取りも直さず、BSCの4つの視点(学習と成長→(変革)プロセス→市場・顧客の視点→財務の視点)の因果関係(フレームワーク)と類似していることに注目したい。

 また、キャノン御手洗社長(当時)によれば、「経営とは、技術や社会の動向について仮説を立て、それを実行し検証しながら、間違っていれば修正していくプロセスだ。中長期の目標を立ててはいるが、日々、修正が必要になる」とある。セブンイレブンを立ち上げた鈴木敏文(元)会長も、常々同様の信条を披露しているが、経営のPDCA,すなわち経営のマネジメントを語る卓見であろう。なぜならば、経営の対象は人、モノ、カネから社会まで幅広く、それらは常に変化をしていくものという背景があるからだ。よく聞く話であるが、中期経営計画はどのくらいの頻度で見直し・修正すれば良いのですか、などという愚問を発する経営企画部門の方々には、噛み締めてほしいところである。

 経営品質賞のフレームワーク(ビジネスエクセレンスモデル)について触れれば、この書籍に書かれているほぼすべてが同フレームワークで説明できると言えよう。ただ読み流すのも良いが、BSCも含めて、自分なりに納得感のあるフレームワークを照らし合わせながら読んでいくことも、無駄ではないと思う。なぜならば、書いてある内容とフレームワークとを比較しながら読んでいくと、そこに見えてくるギャップにこそ「思考の機会」が生まれてくるからではないだろうか。読者の意見を待ちたい。

参考:日本経済新聞社=編(2008:第6刷)『やさしい経営学』日経ビジネス人文庫、日本経済新聞出版社

以上

経営品質の散歩道(12) アイデアのつくり方とホームズの思考

「ブック・レビュー」と称する読書勉強の同好会がある。もともとはバランススコアカード(BSC)を研究するメンバーの集まりが、発展的解消をして読書勉強会に移行したものだ。優れた幹事役の方のおかげで、毎月順番に推薦書を紹介して意見交換を続けている。筆者は2年ほど前から参加させていただいているが、その中で読まれた本のひとつに、ジェームス・W・ヤング著、今井茂雄訳の『アイデアのつくり方』(廣済堂、1998)がある。本文が62頁で、竹内均さんの解説を含めても100頁程度の短編ながら、今でも本棚の一角に存在感を持って鎮座している。1886年生まれのヤングは、アメリカ最大の広告代理店、トムプソン社の常任最高顧問、アメリカ広告代理業協会(4A)の会長などを歴任。広告審議会(AC)の設立者で元チェアマンでもあった。余計な話だが、ヤングは1973年に没しているが、この年は筆者が大学を出て社会に出た同じ年でもある。

 この本には、経営品質に関わるキーワードが散見される。「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない」などというメッセージは、いま流に言えばイノベーションと同一語ではないだろうか。そして、ヤングは本書で「アイデアが作られる5つの過程」を紹介している。その5つのアイデア創造過程とは、①資料を集める、②心の中で資料に手を加える、③孵化段階として自分の意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事を任せる、④アイデアの実際上の誕生(分かった!ユーレカ!)、⑤現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し展開させる、という5段階である。竹内均さんは、データ集め→データ租借→データ組み合わせ→ユーレカ(発見)の瞬間→アイデアチェック、と解説の中でまとめ、先ずもって重要なのは、③と④の意識的活動の時期と述べている。パレート学説(法則)、ブレーンストーミング、KJ法などにも触れ、それらの孵化と発見を支援するヒントとなる手法として紹介しているのも興味深い。

 以上のようなアイデア作成法について興味を持った筆者ではあるが、もうひとつ面白く感じたことは、ヤングが本書の中で、シャーロック・ホームズをたびたび登場させていることであった。シャーロック・ホームズについては、前回の本稿でも触れた。ヤングはホームズが小説の中で出してくるスクラップブックを引き合いに出して、集めた資料から1冊の有益なアイデアの種本を作ることの大切さを紹介している。また、第3の段階に関連させて、ホームズがいつも1つの事件の最中に、捜査を中止して、ワトソンを音楽会に引っ張り出すやり方を回想しているが、創造過程、すなわち「アイデア発酵」の段階での気分転換の重要性を示唆していることに注目したいところだ。

 余談だが、ヤングとドイルの年譜を調べてみると、ヤングはドイルが1882年に病院を開業した4年後に生まれている。有名が「緋色の研究」が1887年、「4つの署名」が1890年、そしてホームズの冒険物の連載が1891年に始まったことを考えると、1906年に20歳のなったヤングは、当然のことながら、ドイルのホームズ物を読んでいたはずで、本書においてアイデアや思考の創造のヒントを、ホームズに求めたことは想像に難くない。

 ホームズの思考法のことである。ホームズの探偵小説は、筆者にとって今でも飽きることはないが、いくつかの名言のうち、「すべての条件のうちから、不可能なものだけ切り捨ててゆけば、あとに残ったものが、たとえどんなに信じがたくても、事実でなければならない」(4つの署名)、というのは興味深いコメントだ。また、ホームズがワトソンに「君は確かに見てはいるが、観察はしていない。見ると観察をするのとでは大違いなんだ。君が何回も昇り降りしている階段は何段ある?知らない?君は見ているだけで観察していないんだ(一部筆者意訳)」(ボヘミアの醜聞)という記述からも、少なからぬ示唆を与えられたものであった。

 今晩から明日の未明にかけて、雪が降り積もるかもしれない。シャーロック・ホームズを再読しながら、雪見酒と洒落込むことにしたい。

参考:ジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』廣済堂(今井茂雄訳)

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高橋義郎