高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

岩槻の料亭「ほてい家」に見る江戸の粋:會田優子さんの和紙人形展

 夕方から埼玉スタジアム2002で浦和レッズ戦があるので、その前に岩槻市内で昼食をと思い、料亭「ほてい家」に立ち寄った。
 折しも、會田優子さんの製作した和紙人形展が開催されていて、その作品の素晴らしさに心を奪われてしまった。
 顔から着ている和服、それに髪の毛や調度類も全て和紙で作られているのである。人形が着ている和服は、まさに絹地ではないかと見間違えるほどの品質である。
 それらの和紙人形が、料亭「ほてい家」の持つ古風で雅な風情と溶け込んでいて、企画をした「ほてい家」さんの大女将や若女将の説明にも、どことなく興奮めいた熱気がこもっていた。
 和紙の絵柄や質感が本当に素晴らしい和紙人形の製作者の會田優子さんご本人からもお話を聞くことができ、誠に至福のひとときを、美味しい料理とともに味わうことができた。
 あまりの感動のため、食事を終えたあとも皆で作品を眺め直し、あやうく食事代を支払うことも忘れるところであったが、妻にたしなめられて無事に会計を済ませた。
 ちなみに、この展示会の模様が公開されていたので以下に紹介するが、いずれにしても、とにもかくにも、まずは実物を「ほてい家」さんでご覧いただきたいと、切にお薦めしたい。 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191004-00010003-teletamav-l11

(以上)

 

 

 

桜美林大学大学院「国際標準化研究フォーラム」アドバイザリーメンバーについて

桜美林大学大学院ビジネス科学研究所国際標準化研究センター「国際標準化研究フォーラム」では、有志の方々へアドバイザリーメンバーの役割をお願いしています。
●「 国際標準化研究センター」の概要
桜美林学園総合研究機構ビジネス科学研究所の研究組織で、拠点を新宿キャンパスに置き、国際標準化、マネジメントシステム、知的財産戦略などの国際標準化のガイドラインや規格を利活用し、経営に資する国際標準化戦略やフレームワークのあるべき姿を研究する活動を進め、その「場」あるいは「機会」の創造と提供を行っています。
●「国際標準化研究フォーラム」について
国際標準化研究センターが運営する学際的ネットワークとして設置されています。
●アドバイザリーメンバーにお願いする内容
①国際標準化研究フォーラム(以下、研究フォーラム)からメールで定期的に一斉送信される企画案件や相談案件を読んでいただく。
②もし可能であれば、そのメールに対するご意見を、適宜、個別に研究フォーラムへご返信いただく。
③もしご意見が無ければ返信する必要はなく、お送りしたメールは廃棄していただく。 
④研究フォーラムは返信されたご意見を参考に案件をまとめ、その結果をアドバイザリーメンバーへフィードバックし共有していただく。
(注記1)アドバイザリーメンバーは公表しませんが、所属のみを記載をしたメンバーリストを本学ホームページに掲載することがあります。
(注記2)アドバイザリーメンバーの方々は、国際標準化、ISOマネジメントシステム、経営品質、バランススコアカードなど、いずれかの領域での知見や経験をお持ちの方々にお願いをしています。
●アドバイザリーメンバーにご関心のある方は、桜美林大学大学院経営学研究科(担当:高橋義郎、ytakaha@obirin.ac.jp)宛にメールでご連絡下さい。

 

以上

 

桜美林大学第14回ビジネス戦略セミナー(最終案内)

本セミナーは、経営学研究科並びにビジネス科学研究所の活動と国際標準化の重要性を企業関係者および地域社会に広くアピールする目的で定期的に開催しています。このたびは第14回目を迎え、メインテーマとして「リスクと標準化」を取り上げ、それぞれの発表者から最近の話題提供をさせていただくことになりました。新宿キャンパスにて半日のビジネス戦略セミナー(参加費無料)です。どうぞお気軽にご参加ください。

●会場及び開催日時
 ・日時:2019年9月5日(木)13:00~18:00(受付開始12:30)
 ・会場:桜美林大学新宿キャンパス「J301」教室(大久保駅・新大久保駅下車)
 ・参加費:無料
 ・申込み:桜美林大学経営学研究科(高橋)まで ytakaha@obirin.ac.jp

●プログラム
 ・13:00 開会及びご挨拶
 ・13:05 演題①「国際標準化におけるリスクに関する最新動向」
     講師:谷口翔太氏(経済産業省産業技術環境局基準認証政策課)
 ・13:55 演題②「標準化と知財戦略のリスクにおける最新動向」
                 講師:原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
 ・14:45 休憩
 ・15:00 演題③「コンプライアンスの実情:弁護士としての経験から」
     講師:馬橋隆紀氏(桜美林大学大学院経営学研究科特別招聘教授)
 ・15:50 演題④「観光リスクの最新動向」
     講師:杉山大輔(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
 ・16:40 演題⑤「ISO31000:リスクマネジメント指針の最新動向」
     講師:高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
 ・17:30 閉会
 ・18:00 懇親会(大学近隣でご希望者のみ、実費ご負担)
     ・懇親会に参加ご希望の方は、高橋へメールでお知らせ下さい。

皆様のお越しを、教職員一同、こころより待ちしております。

2019年9月吉日

桜美林大学大学院経営学研究科 / ビジネス科学研究所
高橋 義郎

ワークマンのSCMに見る全体最適化経営

 サプライチェーン(SCM)全体で無駄を省き、調達量の適正化を図るために、店頭在庫や倉庫の空き具合のデータを取引先メーカーに開示する。その取り組みで味方を増やす経営が、ワークマンで行われている。その成果として、作業服の需要予測が高度化し欠品率7%が4%になり、既存店売上高の前期比伸び率は14%、株式価値総額は2年前と比較して約3倍になった。
 その原動力に昔ながらの「エクセル」を駆使した全社員がデータを基に議論する仕組みづくりがある。約100坪(約330平方メートル)の売り場に常時1700品目の商品を陳列する。以前は発注だけで毎日2時間かかっていた業務が10秒で完了。空いた時間は接客や営業などに使えるため、顧客満足も高まる。その成功要因は、全社で進めたデジタル化。入社2年目から研修を徹底し、エクセルの「関数」は必須スキルに。営業担当はタブレットを片手に、独自の分析ソフトを駆使し、地域ごとの売れ筋商品や販売ピーク月などをデータベースから導き出す。
 結果として、需要予測の高度化という成果が顕著に表れた。高度な人工知能(AI)ではなく、身近なエクセルを使っているので、因果関係を理解できるシステムの方が社員全員が使いこなせる。アパレルチェーンでは、一般的に何が売れるかを予測し、適正量を仕入れて売り切ることが収益を左右する。見込みを外すと過剰在庫を抱えて苦しむ。
 ワークマンは、この予測作業を大幅にシステムに任せようとしている。店長がレジ端末の「一括発注」ボタンを押すだけで納品される仕組みを導入したのだ。作業服は一般的なアパレル商品とは異なり、少なくとも10年程度は売り続ける。ワークマンは品揃えの97%を全国で統一し、店舗レイアウトも標準化している。そのため、どの商品を店舗のどこに置けば、いつ売れるかというデータが膨大に蓄積されている。このデータや直近の売り行きを基に、発注すべき商品の種類と量を算出。個別店舗の発注作業を自動化し、適正な在庫を保てるようになった。
 この自社カスタマイズシステムにより、FC方式で展開する店舗で経験の少ない店長でも、発注作業で戸惑わずにすむ。それに、過剰在庫を気にするあまり機会損失発生の問題解決にもなる。データ分析力も部長昇進ねお条件としており、経営の方向は明確だ。「ワークマンプラス」が低価格でデザイン性の高いアウトドア衣料も立ち上げて顧客層も広がる中で、エクセルを軸にしたSCMの全体最適化経営は、より重要な経営ツールになっていくのではないだろうか。これからの進化が楽しみだ。

(出所:日本経済新聞、2019年7月9日、15面)

 

オープンイノベーションの3つのタイプを考える

 日経ビジネスの特集号に、3つのタイプのオープンイノベーションが紹介されている。1つは「インバウンド型」。サッポロビールでは、外部のアイデアや技術を取り込み、マーケティング開発部ビジネス創出グループが取り組み始めた事例が記載されている。理由は、ビール会社の社員だけでできる創造には限界があるからで、最終的な判断を下すのは、発案者である消費者だという。消費者ならではの創造性に触れるオープンイノベーションが社内のビール開発に新たな風を取り入れる効果も、サッポロビールは期待をしているのだ。
 2つ目は「アウトバウンド型」。内部の技術やノウハウをさらけ出すことで、外部との連携を促す試みで、実践事例として富士フィルムが挙げられている。本社の一角にある「オープンイノベーションハブ」で虎の子の技術を外部の企業に紹介し、そこでの議論を基にオープンイノベーションの目標を具体化していく。相手企業は、どの技術に興味を持ちそうか、富士フィルムとしては、どの技術で相乗効果が生まれそうだと期待しているかなど、様々な角度から相手が関心を持ちそうなテーマを検討し、あらかじめ10テーマ未満に絞って技術を紹介する。花王がヘアサロン専用ブランド「ゴールドウェル」で発売した、鮮やかな発色を特徴とするヘアカラーリング製品は、その成果だという。
 そして、3つ目が、「連携型」と呼ばれるタイプである。より広く連携先を募り、新たな事業アイデアを発掘し、新しいビジネスモデルの確立を目指す動きを指す。短期集中型でアイデアの検討・検証をする「アイデアソン」や、大企業がスタートアップに投資する「CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル」といった取り組みが代表例。スタートアップとの関係を早くから構築する狙いや、日立製作所と博報堂DYホールディングスがCVCを創設して有望なスタートアップと接点を持っておきたいという企業の姿勢が垣間見える。
 一方、過去に流行したマネジメント手法と同じように、オープンイノベーションという手段が目的になってしまっているケースも散見されるようだ。ブームに乗り遅れないように、とにかく何かやらなければというような焦りが、カタチだけのオープンイノベーションになってしまうのだろう。この傾向は、今に始まったことではなく、日本の企業社会における負の活動側面といえるかもしれない。難しいところである。

(出所:「もう失敗させないオープンイノベーション」『日経ビジネス』2019年7月15日号)

 

『濃尾参州記』を読んで

 ちょっと気分を変えたいときに本棚から引っ張り出す本の1つに、司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズがある。「濃尾参州記」は、その執筆中に司馬遼太郎が亡くなった未完の書である。巻末の週刊朝日編集部村井重俊氏の追悼余話にある「もし司馬さんがお元気だったら、きっと笑って言われるに違いない。名古屋ってほんとにツイてない所だね」という一文が印象に残る。未完のために文章量が少ないせいか、巻末には前述の村井氏や安野光雅画伯の余話や、安野画伯のスケッチ画と司馬さんの取材中の写真が載せられているこの文庫本は、パラパラとめくり直すたびに、妙に懐かしい想いがするのが不思議だ。
 濃尾参州となれば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が登場する。その中で、信長の戦略について触れたい。信長の一代のなかでも、若いころの桶狭間への急襲についてである。彼は尾張衆をひきい、いまの名古屋市域を走った。勝ちがたい敵とされた今川義元の軍に挑み、ひたすら主将義元の首を一つをとることに目的を絞り、みごとに達した。それは、戦略の選択と集中とか、全体最適化戦略とも言えるかもしれない。
 今川方は、長蛇の列をなして行軍している。信長にすれば、不意に出てその中軍を衝き、義元一人の首をあげることのみを考えていた。あげぞこねれば、信長方が全滅する。この作戦において信長がやろうとしていたのは、近代戦術でいえば騎兵の集団運用による奇襲であった。雨中、彼は部下たちに最後の命令をあたえた。突き捨て、切り捨てにせよ、ひとすじに駿府どのの御首級をあげることに目標を集中させたのである。
 やがて、義元は織田軍によって首を搔き取られた。このとき、信長は義元の死を知ると、全軍に引き上げを命じ、風のように戦場を去り、熱田を経由して清洲城にもどった。事前に立案した方針と戦略に従えば、当然の処置であったろう。
 村井氏の余話に戻るが、「信長の偉い所は、桶狭間の成功におぼれなかったところだね。人間はいちど成功すると、同じことを繰り返して失敗します。信長は二度と少人数での奇襲をしなかったからなあ」と、司馬さんは村井氏に話していたと書いている。司馬さんの「街道をゆく」シリーズは、近江から始まっている。「近江というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国が好きである」というくだりは、筆者も諳んじることができるくらいに印象に残っている文章表現である。シリーズの最初と最後の稿を読み直す毎に、街道記の心地よいかほりが漂ってくるのは、筆者だけであろうか。

(出所:司馬遼太郎『街道をゆく43濃尾参州記』朝日新聞出版、2009年5月)

 

ブックオフを潤す「デジタル疲れ」

 最近の新聞で「デジタル疲れ」と「オワコン」という言葉を目にした。オワコンとは「終わったコンテンツ」の略語で、業績が低迷してきた「ブックオフ」がそのネット用語で語られた。そして、デジタルサービスが広がる中、他者とのコミュニケーションを敬遠する「デジタル疲れ」という用語も出始めている。
 デジタル疲れがオワコンの「ブックオフ」の業績を復調させている(2019年4月~6月期前年同期と比べて売上高は6%増、純利益は2.9倍)というのが、その記事の内容であった。ブックオフの宿敵であるフリーマーケットアプリ大手のメリカリからの思わぬ恩恵で、商品発送など個人間取引の手間を嫌ってリアル店舗に回帰する消費者が増えているという。いわゆる「メルカリ疲れ」からの動きである。
 フリマアプリを通じた中古品売買は、スマートフォンで済む手軽さがあり、しかも買い取り価格はメルカリが優位だ。ある中古商品では、ブックオフが5千円とすると、メルカリは7千円などのような差があるという。だが、フリマアプリを使うと個人間で価格交渉をしたり、配送や梱包をするなど、手続きが面倒と考える消費者が実店舗に戻り始めた。
 そこで、ブックオフは、都心部を中心に書籍やブランド品などの買い取りを担う小型店「総合買取窓口」を広げ、所得水準の高い都市部での買取力を高め、大型店の品揃えを充実させるなどの新たな戦略を取り始めた。復調が一過性に終わるリスクもあり、ブックオフの経営におけるリスクマネジメントが試されている。ネットサービスが普及する中でも、リアルの強みをアピールし、デジタル疲れの消費者の潜在需要を取り込むことができるかが、店舗の生き残りを左右することになるだろう。
 本稿の最後に、中古品買い取りのリアルとネットの違いをまとめてみた。ちなみに、筆者はリアル店舗主義である。

◆リアル店舗(ブックオフなど)
・メリット:多数の本や雑貨をまとめて買い取る、買取価格は一律で交渉はない
・デメリット:買取価格が安い、ネットより商品を探しづらい
◆フリマアプリ(メルカリなど)
・メリット:スマートフォンで出品、買取価格はリアル店舗より高い
・デメリット:個人間で価格交渉する場合も、出品者が配送や梱包する

(出所:日本経済新聞、2019年8月16日、12面)

 

『アサヒビール30年目の逆襲』を読んで

 アサヒビールの経営について知り始めたのは、同社が1997年度経営品質賞を受賞したときからであった。当時、スーパードライが爆発的な売れ行きで、KARAKUCHIがビール業界のキーワードになっていた頃である。その要約版報告書は、いまでもバランススコアカード(BSC)の戦略マップとスコアカードの演習ケースとして使わせていただいている。「うまさと鮮度」の品質戦略と「社会的責任」の環境戦略で、売上高営業利益率を高めていく戦略の策定と展開を目指した経営のシナリオは、筆者にとって印象的な経営モデルで、吾妻橋にある同社の戦略担当者へ取材をしに行ったものである。
 折しも筆者が勤務していたフィリップス社でもEFQM(欧州品質賞)をグローバルに展開をしていたので、日本におけるベストプラクティスとして、リコーの事例とともに社内会議で発表をしてこともあった。そのような経緯もあり、書店で同書を見つけたときには、躊躇なく購入をしてしまった。
 同書は、主にマーケティングやブランドの戦略について書かれているノンフィクションであるが、そのまとめとして、平野伸一社長へのインタビュー「ものづくりのイノベーションで世界へ」を紹介したい。平野社長は、同社が1987年発売のスーパードライを最後に目立ったヒット商品がないことに危機感を持ち、大幅な増収増益へと舵を切る必要があること、その為にはイノベーション(成長戦略)とコストリダクション(聖域なき構造改革)を経営方針とすること、などを社内で発表。販売シェアだけでなく、技術の優位性を各カテゴリーでNo.1になることで競争優位ポジショニングを確立し、それによって得た原資を次のイノベーションや商品戦略に回していく方針を打ち出した。
 イノベーションの事例としては、麦芽を増やしても糖質がゼロのまま安定する「最適点」を発見したのはイノベーションであり、その技術は糖質ゼロを維持しつつ麦の使用量を30倍に高めた「クリアアサヒ贅沢ゼロ」へと上市。
 また、コストリダクションはリストラなどのコストカットとは違い、従来は購買部門だけの取り組みだったのを、これからは商品設計からはじまり、あらゆる面において全社で取り組むことにより、大型商品が育てば、スケールメリットによる原価低減や製造・物流コストの効率化、つまり全社最適化経営につながっていく発想である。
 そして、海外ビール会社のM&Aを通じて、スーパードライやニッカウィスキーをグローバルブランドに育てる戦略も始まっているという。筆者が使わせてもらっているBSCも、そろそろ修正の必要があるようだ。

(出所:永井隆(2017)『アサヒビール30年目の逆襲』日本経済新聞出版社)

 

根強い集客力に見る100円ショップのBSC的考察

 国内消費の現場で100円ショップの存在感が高まっている。2019年度の店舗の増加数で100円ショップ大手4社の合計(310店)がコンビニエンスストア大手3社の合計(276店)を上回る見通しだ。スーパーなどが中核テナントとして誘致する動きも目立っており、小売業の力関係が変化しつつある。
 ちなみに、縦軸に「店舗数増加率」、横軸に「売上高増加率」で業界別のポジショニングをプロットしてみると、両方の因子ともスーパーやコンビニよりも高く位置にあるが、売上高増加率ではドラッグストアにかなわない。
 100円ショップの躍進の要因のひとつに、スーパーなどの誘致元の期待と満足が満たされていることにある。100円ショップで日用品を売ってもらい、誘致したスーパーは総菜や生鮮品の売りがを広げることができ、若い世代が来店してくれる客層の拡大を図ることができる。この場合、誘致するスーパーにとって100円ショップはビジネスパートナーとなる。
 二つ目の要因としては、台頭するネット通販への抵抗力もある。おしゃれな商品も増えて割安なので、送料もかからず、リアル店舗で選ぶ楽しさがあるということだろう。三つ目は、消費増税前後に消費者の節約志向の高まりもある。四つ目は、コストの安い海外での生産と商品輸入による低価格商品の提供である。
 その一方、成長する100円ショップにも課題がある。薄利多売のビジネスモデルなので、1商品あたりの粗利が小さいこと。そのため、人件費の高騰は他の小売業よりも重くのしかかる。そのため、人件費抑制のためにセルフレジやQRコード決済の導入も進めている。また、海外からの輸入が多いために為替相場の変動による調達コストの増加は、大きなリスクである。
 そのような100円ショップの経営目標をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで書いてみると、以下のようになるのではないか。読者の意見を待ちたい。
<財務の視点>売上高の増大、営業利益の増大、1商品あたりの粗利の増大
<顧客の視点>来店者のリアル店舗購買満足度向上、誘致先満足度増大、若い世代の来店増加
<改善プロセスの視点>来客数増大、若年世代向商品充実(割安でおしゃれな商品など)、節約志向対応商品・顧客価値の増強、人件費抑制施策実践(レジ業務省力化など)、為替変動リスク対応策実施(調達コストなど)
<経営及び組織・個人能力の視点>ドラッグストアなどのベンチマーキングによる成長シナリオの見直し

 (出所:日本経済新聞、2019年7月13日、11面)

 

経営に資するISOマネジメントのリスクと機会を再考する

 経営者の視点に見る「経営に資するISOマネジメントとリスク・機会」について考えてみたい。日本品質管理学会の公開セミナーのひとつに、「クオリティトーク」という会合がある。日本科学技術連盟の高円寺ビルで夕方から夜にかけて開催されるのだが、軽食を食べ一杯ひっかけながら講演者の話しを聞くこの会合には、筆者も何回か足を運んだことがある。いくつかのテーブルに分かれて着席し、席は指定されるため、毎回ちがったメンバーの方々と知り合う機会を得るのも、異業種交流の場として、なかなか良いものである。
 いままでに出席した会合のテーマは、ISO31000のリスクマネジメント(野口氏:横浜国大)、因果と相関の関係(同じ横浜国大の先生だったと記憶している)、そしてISOマネジメントシステムを経営の視点で講演されたテクノファの青木社長の話しである。その青木社長の講演(第110回クオリティトーク)の概要が、『品質』に掲載されていた。ビジネスエクセレンスモデル(経営品質賞)のフレームワークを実践してきた方々には、もっともな話だと合点をする講演内容であったろうが、その掲載文では、「リスクと機会」に青木氏の経営者としての想いが表れていると感じた。
 同氏の掲載文を再度見てみると、「事業運営をする上ではリスクはつきものである。一方で事業運営のことを意識すればするほど,先に考えるべきことはリスクではなく機会の方である。特に営利企業であれば収益獲得が常に求められる中で事業機会がどこにあるかを常に意識し、その機会から成果を挙げることは必須である。規格では、リスクおよび機会、という語順になっているが、その順番にとらわれすぎないことである。筆者(青木氏)は経営者という立場もあることから、日ごろの思考においては機会の方に9割以上の意識を向けているといってもよい。そのうえでその機会を追い求めていくにあたってその機会の裏に潜むリスクは何かという捉え方をしている。組織内での職位が上になればなるほど、規格の読み解き方は字義通りではなく,自組織の経営管理を考えた応用動作をしていってほしい。」と述べている。
 ISO31000(リスクマネジメントの指針)に深く関わってきた野口氏によれば、リスクマネジメントは、未来の指標を創ることであると、喝破している。とすれば、青木氏の言う「機会を追い求める意識が90%」というのも、経営者にとってみれば、ごく自然な想いであろう。一方、ISOマネジメントの現場では、規格の読み解きを論じている場面が多く見られる現実を見ると、やはり日本では真に経営に資するISOマネジメントシステムの構築と運用は難しいのかなと考え込んでしまうが、いかがであろうか。

(出所:青木恒享「経営力向上のためにISOを使いこなす方法ー認証取得は目的でなく経営の選択肢ー」『品質』日本品質管理学会、Vol.49, No.3, 2019、p.39)

全体最適化経営の視点から見る価値連鎖全体の価値創造の最適化

 近頃のメディアや論文では、題名にAIというキーワードを使った記事や執筆が多く見られるのは、昨今の時流というべきものであろう。最近も、一般社団法人日本品質管理学会の学会誌『品質』を眺めていたら、「サービス工学xAIと品質向上」というタイトルの招待論説が目に飛び込んできた。その中で興味を引いたのは「価値連鎖全体の価値創造の最適化」という項で、全体最適化経営の視点から、その内容に惹かれた。
 執筆者の岡田氏によれば、三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)を考えてみると、「買い手よし」の重圧が強すぎる為、売り手の疲弊・低生産性が起こることがしばしばあるという。つまり、顧客価値創造のみに近視眼的になりすぎると、従業員価値や社会価値がないがしろにされてしまうリスクがある。そして、三方よしの実現が困難な理由として、個別企業と当該企業が関与する価値連鎖との相対的な関係性が変わってきたことを、この論文の執筆者は指摘している。
 多くのサービス産業で、一社完結型の価値連鎖を構築することは困難になり、むしろ、当該サービスの価値連鎖は長く、多種多様な利害関係者との連携や協調が欠かせない時代になっているという。もしそうであれば、我が国のサービス産業は、伝統的な産業・業界による区分と競争という視点だけではなく、産業・業界を超えたサービス価値連鎖単位での協調と最適化の視点も重要となると述べている。そして、産業・業界を超えたサービス価値連鎖単位で、AI時代の新たな三方よしの在り方を、考えていくべきであるとしている。
 さらに、個別企業による三方よしの実現が困難であり、従業員価値や社会価値がないがしろにされてしまうリスクが生じている典型例は、日本の物流価値連鎖であるという。物を届けるという社会的機能は欠かせないものであるが、現代の物流は、運輸業・倉庫業から宅配業・小売業を含む価値連鎖全体として消耗し、疲弊し、脆弱になっている社会課題に対して、筑波大学は他の組織と連携し、「サービス工学xAI」の連携体制を構築し、日本の物流価値連鎖の強化に貢献する研究開発を実施することにしたとある。
 「買い手よし」の過度な重圧が再配達問題などのサービスシステムの非効率性を生み出していること、過剰な対人接客による売上最大化(売り手よしではなく、売れればよし)に囚われすぎている現状、などにスポットを当てている。
 以上、個人的な勉強のために、抜き書きさせていただいた。

(出所:岡田幸彦「サービス工学xAIと品質向上」『品質』日本品質管理学会、Vol.49, No.3, 2019、pp.7-8)

エレコムの高速開発経営に見るBSC的考察

 デジタル周辺機器を主力ビジネスとするエレコムが、関連する30製品のうち13分野でトップシェアを握った。勝率4割を可能にするのは、年4千もの新製品を世に出す高速開発と、メール1本で開発に着手し、不振なら直ぐに生産中止し、製品群の3分の1を毎年捨てる新陳代謝により、目まぐるしく変化する市場を生き抜く。同社の経営をBSCの4つの視点の因果関係でまとめてみると、以下のようになるだろうか。読者の意見を待ちたい。

<財務の視点>
①ビジネスの成長:2020年に1千億円の達成、②売上高営業利益率:10%以上達成
<顧客の視点>
①かゆい所に手が届くという顧客の評価向上、②まずは世に出し、市場で売れなければすぐにやめる経営、③ヘルスケア分野などでのB2Bビジネスの拡大、⓸海外ビジネスの拡大
<変革プロセスの視点>
⓸ファブレス(製造委託)による迅速で低コストな製品製造の実践
③メールによる開発企画書の迅速な役員決済システム「メール上申制度」の導入
②開発部隊による1日平均10件以上/人の新製品開発の実践
①営業から得た顧客の要望に基づいた新製品開発と迅速な店舗への提案営業
<経営や・組織・個人能力の視点>
⓸開発担当者の新製品開発企画書作成スキルの向上(商品化の情報収集と精査)
③開発制度を高めるデータ収集システムの運用(主要量販店20社の販売データによる顧客ニーズの把握)
②営業力の強化(量販店員から顧客の要望情報を吸い上げて開発部門へ伝達)
①経営方針の理解浸透(やめることを恐れない高速な新陳代謝で時代への即応力重視)


(出所:日本経済新聞、2019年8月9日(金)、12面)

月刊アイソス10月号から連載記事を執筆します

◆マネジメントシステムの専門誌「アイソス」10月号からスタートする新連載
「桜美林大学のISOマネジメントシステム・コーディネーター養成プログラム」を紹介します。「ISOマネジメントシステム・コーディネーター」とは、ISOマネジメントシステムを利活用し、経営者の立場に立ち、経営の視点を持ってマネジメントシステムの企画・構築・運用・改善ができる人財のことです。今回の連載では、6回にわたり、桜美林大学の大学院経営学研究科及びビジネスマネジメント学群の教授陣並びに企業経営者が、桜美林大学大学院が目指すISOマネジメントシステム・コーディネーター養成のプログラムを紹介します。
連載各回のテーマと執筆者は下記のとおり。
10月号:第1回「ISOマネジメントシステム・コーディネーター養成プログラムの全貌紹介」
・執筆者:高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
11月号:第2回「財務目標を達成する非財務成果実現のマネジメントシステム設計論」
・執筆者:杉山大輔(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
・高橋清(エンライト株式会社代表取締役社長)
12月号:第3回「マネジメントシステムを経営戦略に結びつける」
執筆者:坂本雅明(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
1月号:第4回「マーケティング活動を経営成果に結びつける」
執筆者:宮本文幸(桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授)
2月号:第5回「リスクマネジメントの仕組みと活動を経営成果に結びつける」
執筆者:高橋義郎(前掲)
3月号:第6回「マネジメントシステムによる経営課題解決の提案書を作成する」
執筆者:高橋義郎(前掲)・原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)

(出所:「アイソス」のメルマガ記事より)

 

『街道をゆく 21 芸備の道』を読んで

 まだ広島空港が市内に近い場所にあったころ、仕事で広島県の三次(みよし)市へ出張する機会が何度かあった。三次へは広島駅から芸備線で行くか、あるいは車で移動することもあった。仕事の合間に鳳源寺(ほうげんじ)にも立ち寄り、赤穂義士、大石良雄が手植えしたという枝垂桜がある庭も見た記憶がある。霧が湧き出る地形でもあり、三次は霧の町とも呼ばれる。そのせいか、三次浅野家の代々の当主が病気で若死にするために長くは続かなかった。若死の原因は、結核であったという。
 三次への街道沿いに吉田町があり、毛利元就が居城の郡山城を築いたところである。彼は政治の要諦として、「其の人を侮るものはその土(くに)に君たらず」ということを常に言っていたという。そのような政治姿勢のためか、当時の安芸門徒への対応も悪からず、その政治姿勢は経営の視点からも注目して良いと思われる。元就が毛利家を相続して以来、大きな勢力を持っていた尼子氏が元就を攻めつぶす最悪の事態に備えるために、元就はあらゆる手を打っていた。その基本方針を支える基調となる要素は、領民撫育と一郷団結主義であった。元就の領民撫育は徹底していて、「いっそ農民と一緒に」という思想が最初から元就にあったと言われている。具体的には農民に対し、領主と運命を共有する意識を持たせることであったが、それを実践することは、なかなか難しいことであったろう。
 事実、元就は、尼子の大軍が来襲したとき、領内の農民とその家族をことごとく郡山城の中に収容してしまった。このことは、かれの撫育策が本物であったことを示している。元就の戦略は、まず山城である郡山城に閉じこもり、来襲軍が疲労するのを待ち、その間、彼が臣礼をとってきた大内氏から援軍を仰ぎ、その到着とともに尼子軍の労を打つというもので、弱小の領主が、山陰・山陽の兵をこぞってやってくる尼子氏と対抗するには、それ以外になかった。元就は、郡山城主になったときから、この型を考え続けてきたのであろう。そのためには、農・商と一つにならねばならない。その功利性が、やがて元就の基本的な政治思想になっていき、山陰・山陽を覆う勢力になってからも変わらなかったと、司馬遼太郎は書いている。
 三次への出張時に吉田へ立ち寄ろうと何度も思ったが、結局、その想いは叶わなかった。いまになって思えば、誠にもったいないことである。

(出所:司馬遼太郎(2013)『街道をゆく21<新装版>芸備の道』朝日新聞出版)

『すごい効率化』を読んで

 経営学や経営コンサルティングに関わっていると、「効率化」という3文字は魅力的である。同書を読み始めたのは、そんな背景からで、すなわち、書名に惹かれた。
 同書は、その執筆者の経験から体得された効率化のノウハウが、副題に書かれているように、最少の時間と労力で最大限の成果を14日間で出すプログラムで構成されている。目次を見てみると、決まった場所と時間を作る、パソコン環境を徹底的に整える、操作・入力をほぼ自動化する、時間を断捨離する、CAPDでまず検証する、頭が良くなる箇条書き記録法、しないことリストを作る、自分だけではなくチームで効率化する、50%で見切り発車する、超効率・情報収集術、超効率・時間管理術、睡眠を極める、食事や運動にこだわる、コミュニケーションを極める、などの14項目である。
 この中で、筆者が興味を持って読んだ目次の項目は、CAPDという考え方である。PDCAで計画を立てることから始めるのは、非常に危険だというのである。その理由は、まだやっていないことは、そもそも有効な計画が立てられないからだという。例えば試験の結果から原因や評価・検証をし、A(改善)をして、もう一回やり直す。なぜ点が低かったのか、不合格だったのかをC(評価・検証)をしてからA(改善)をし、その後にP(計画)とD(実行)をするサイクルをスタートさせるべきというロジックだ。
 もうひとつの項目は、人に何かを頼まれたときは、どんなにいきなりでも、自分の仕事で忙殺されていても、まずは全体の流れが止まるかどうかを見極めて、止まるくらいなら、そちらを優先するという思考が大切としている。言い換えれば、基本的に他人からの仕事を優先的にやるべきと主張している。全体の流れを止めてしまうことは、結果的に非効率だと理解すべきと書いている。
 いずれにしても、意志を強固にし、欲求や行動をコントロールすることが可能となれば、飛躍的な成長を遂げられると著者はいう。思考が変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり、習慣が変われば結果が変わり、そして、結果が変われば未来が変わる。14日間のプログラムで、未来が変わるのであろう。

(出所:金川顕教(2017年)『すごい効率化』KADOKAWA)