高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

桜美林大学「マネジメントシステム・コーディネーター養成講座」開講案内

◆講座の概要
国際標準(ISO)、経営品質、バランススコアカードなどのマネジメントシステムを利活用し、経営者の立場に立ち経営の視点を持ってマネジメントシステムの企画・構築・運用・改善ができる人財の育成や、中小企業の次世代事業継承者の能力やスキルを向上させるプログラムを提供する目的で、オープンカレッジ「マネジメントシステム・コーディネーター養成講座」を開講します。大学院経営学研究科とエクステンションセンターが企画・運営し、学内外のアドバイザリーメンバーのご意見をもとに立案された学修プログラムで、修了者には、桜美林大学長が修了証を交付いたします。

◆開催要領
・定員 / 10名(最少開講人数5名)
・受講料 / 150,000円(消費税込み)
・回数 / 全6日間(集中講座)
・日程 /  2018年8月9(木)、10(金)、13(月)、14(火)、15(水)、16(木)
・時間 / 9:00~
・会場 / 桜美林大学四谷キャンパス千駄ヶ谷校舎(最寄駅はJR千駄ヶ谷駅)
・その他 / 講座開催中の昼食あり。

◆応募資格
・年齢、学歴は問いませんが、マネジメントシステムや企業業務の関係者で、
    ある程度の業務経験を有すること。

◆申込方法
・桜美林大学公開講座ホームページから「受講申込」をお願い致します。
 https://www.obirin.ac.jp/extension/school/yotsuya/course/biz/Y18900.html

◆修了要件と修了証発行
・指定された科目を修了し、演習課題に合格すること。
・修了者には桜美林大学長が発行する「修了証」を授与。(単位付与はなし)

◆講座内容に関する問合せ先
・桜美林大学大学院経営学研究科 高橋義郎 ytakaha@obirin.ac.jp

◆主な内容

・講義名や順序は諸事情により一部変更されることがあります。括弧内は担当講師。

<1日目>

8/9 (木) 『マネジメントシステムの新潮流を理解する』
①開講、オリエンテーション、MSコーディネーターと全体最適化経営論
(桜美林大学大学院経営学研究科長、大学院教授陣) 
②グローバルな視点から見る国際標準化の新潮流
(経済産業省様)
③ISOマネジメントシステムの新潮流
(日本マネジメントシステム認証機関協議会:JACB様)
④経営品質向上マネジメントシステムの新潮流
(日本経営品質賞連携講師様)
⑤マネジメントシステムとしてのバランススコアカード論
(桜美林大学大学院教授陣)、ネットワーキング

<2日目>

8/10(金) 『マネジメントシステム経営と国際標準化研究の新潮流を理解する』
①経営戦略論・ポジション学派対RBV、DC戦略論とマネジメントシステム経営
(桜美林大学大学院教授陣)
②知財の創造と収益化(イノベーションをどう起こすか)とマネジメントシステム経営(同上)
③イノベーションと技術経営の新潮流とマネジメントシステム経営
(同上)
④国際標準化及び知財戦略論とマネジメントシステム経営
(同上)
⑤国際標準化新潮流に対応する人財戦略論とマネジメントシステム経営
(同上)

<3日目>

8/13(月)  『マネジメントシステムを経営戦略に結びつける』
①ビジョナリー経営の方針・戦略とマネジメントシステム関係論
(外部講師様)
②マーケティング論
(桜美林大学大学院教授陣)
③~⑤経営戦略策定とマネジメントシステム
(首都大学東京大学院社会科学研究科非常勤講師・富士ゼロックス総合教育研究所研究室長様)

<4日目>

8/14 (火) 『マネジメントシステムの仕組みと活動を非財務成果に結びつける』
①非財務成果の実現を目指す仕組みづくりと目標(KPI)の重要性
(桜美林大学大学院教授陣)
②マネジメントシステム設計論Ⅰ:概論
(埼玉県経営品質協議会運営委員様)
③マネジメントシステム設計論Ⅱ:非財務系計画設計
(同上)
④マネジメントシステム設計論Ⅲ:顧客・市場価値の創造の成果
(同上)
⑤マネジメントシステム設計による経営課題解決への提案書作成
(桜美林大学大学院教授陣)

<5日目>
8/15 (水) 『マネジメントシステムの非財務成果を財務成果に結びつける』
①経営分析とマネジメントシステム関係論
(桜美林大学大学院教授陣)
②マネジメントシステム経営におけるIT、IoTなどの利活用
(同上)
③製造・サービス業における財務成果達成への非財務活動と成果の関係論
(同上)
④演習:マネジメントシステムとバランススコアカードを活用した事業計画立案
(同上)
⑤演習:最終課題説明、事例解説、課題取り組み開始
(同上)

<6日目>

8/16 (木) 『マネジメントシステムによる経営課題解決の提案書を作成する』
①5日間の講座の振り返り
(桜美林大学大学院教授陣)
②経営課題解決提案書作成
(同上)
③発表:経営課題解決提案書の発表と講評
(同上)
④総括「振り返り、総評、修了書授与、他
(同上)
⑤閉講
(同上)

◆最後までお読みいただき、有難うございました。皆様の受講を、心からお待ちしております。

☞ 本講座に関する記事が月間『アイソス』6月号(5月発売)に掲載。

☞ 「マネジメントシステム・コーディネーター養成講座」に戻る。
    https://www.obirin.ac.jp/extension/school/yotsuya/course/biz/Y18900.html

 

(以上)

40年ぶりに『取材学』再読

 JR御茶ノ水駅から駿河台の坂道を下っていくと、右手に古本屋さんがある。その前を通りすぎようとしたとき、ふと気になって、そのお店に入ってみた。とくに探す本があったわけではないが、本屋さんというのは、ふらりと立ち寄ってみたくなるものである。店の書棚を見てまわるうちに、20代半ばに読んだことのある本を見つけた。それが、『取材学』という本である。
 この本は、少し大袈裟に言えば、筆者の執筆や調査などの活動において、大いに触発された本の1つである。その構成としては、
・取材とはなにか
・文字の世界の探検
・耳学問のすすめ
・現地を見る
・取材に人間学
となっており、いまでも機会あるごとに話すくだりとしては、「じっさい、問題さえはっきりしていれば、それにこたえる情報というのは、あたかも磁石に鉄粉が吸い寄せられるように、しぜんにあつまってくるものなのだ。あれやこれやの雑多な情報が身辺をとりまいていて、いったいどうしてよいのかわからない、という情報混乱に悩むのは人間のがわの問題意識がじゅうぶんに熟していないからである。」といったものである。この箇所のほとんどは、そらで言えるほどに強い印象を受けた。
 もうひとつは、知的散歩のことである。知的散歩は無目的であるけれども、その途中でいろいろなものを見つけることができる。ぼんやりと漠然とした事柄が頭の中に存在しているときなど、ふと気がついて直感のようなものが働くといった効用も、知的散歩にはあるという。筆者もまったく同感で、問題の発見や企画の創造にもつながる体験も少なくない。
 古本屋で買い求めた同書は、だいぶ黄ばんでいる。その黄ばみが、時間という重みを、筆者の本棚に加えてくれた。

(参考:加藤秀俊『取材学・探求の技法』中央公論社、1975年10月)

『経営事例の物語分析』を読む

 「企業盛衰のダイナミックスをつかむ」という副題がつけられたこの本は、企業の急成長、持続成長、停滞、衰退、消滅といった企業盛衰ダイナミクスの局面における結果が、なぜ生じたのか、その原因になりそうな諸条件を理論的に解釈しながら、因果関係を探っていくことを目指しているという。ちなみに、物語とは、結果を生み出す出来事の連鎖であると定義している。
 同書の中で、「ミクロ経営事例での出来事認識の枠組み」という図が紹介されている。その図には、フロント・フォーマット(顧客への価値提案)→バック・フォーマット(価値創造の仕組み)→財務システム(財務成果と資金管理)、がフロント・フォーマットに戻るという経営サイクルが示されているが、筆者が関心を持つのは、まさに財務システム(財務成果と資金管理)への因果関係の部分である。
 「出来事間の因果関係をたどれ」の節には、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの言葉が出てくるのも、面白い。同書の紹介では、「ある出来事は、さきに生じた出来事から、必然的な仕方で起こる結果であるか、あるいは、ありそうな仕方で起こる結果でなければならない」と、アリストテレスが悲劇を主な題材にして、物語の形式的特徴を歴史上はじめて論じていることを、同書に掲載されているのだ。先の出来事は原因、後の出来事は結果、とする因果関係で結ばれることになるとの記述が続く。
 原因と結果との因果関係、非財務活動の成果が財務成果にどのような因果関係で影響を及ぼすのか、バランススコアカードにある因果関係などについて再考する良い機会を与えてくれた本であった。
(参考:田村正紀『経営事例の物語分析』白桃書房、2016年10月)

南伊予のこと

 3月に愛媛県に出張する予定があるので、この機会にと思い、南伊予に関わる司馬遼太郎の書籍を本棚から取り出し、読み直してみた。『街道をゆく14南伊予・西土佐の道』、『坂の上の雲(一)』、『花神(上)』の3冊である。
 これらの本を携えて、松山、内子、大洲、卯之町、宇和島あたりを訪ねてみたいと思っているが、与えられた時間はあまりにも短く、卯之町と宇和島あたりで時間切れになりそうだ。まずはこれらの本を読みながら、週末のスケジュールを考えることにした。
 読み直してみて、まず目に入ってきたことは、愛媛という県名が名付けられたいきさつである。愛媛は文字通り「いい女」という意味で、このような粋な名前を行政区の名称に採用しているのは、世界中にないのではないかと、司馬さんは書いている。砥部は砥石の産地で、砥部焼もそのあたりの背景から苦難の末に生まれたこと。江戸末期の蘭学者である二宮敬作が住んでいた卯之町は、「うだつ」を上げている古風な町並みの残る仲之町にスポットをあてている。そして、彼の街道の旅は、宇和島に至り、西土佐への移動で終わる。
 宇和島といえば、『花神(上)』主人公の村田蔵六、シーボルトの娘イネ、それに前述の二宮敬作との関わりである。宇和島の話しからは少し離れるが、冒頭に出てくる緒方洪庵は、人間のからだというものは、諸機械がみな各自に運動していて、それで生活をしている。その原(もと)は一個の力より生ずる、と門生に説いた。その一個の力というのを洪庵は生活力と名づけた。その生活力とは何か。かれ自身は結論をのべず、「いまだ定説あることなし」と突きはなしている。こういう洪庵の平明な合理主義が、この門にむらがった青年たちに、どれだけの思想的影響をあたえたか、はかりしれない、と司馬さんは言う。
 蔵六が、適塾の物干し台にのぼり、ひとり豆腐の皿を膝もとにひきつけておいて酒を飲むのが好きだったことも、筆者の好む情景である。そして、蘭学を通じて諸国を歩き回ることができる不思議さを、「なるほど、蘭学というのはありがたい。包丁職人と同じだ」とのくだりは、スペシャリストに共通する正直な想いであろう。結局、蔵六は宇和島藩主伊達宗城の命で、蒸気船や砲台を作ることになる。医者の道から、蔵六の人生を大きく変えた転機となったのが、宇和島であったろう。
 松山では、前回の滞在では立ち寄れなかった「坂の上の雲記念館」を訪ねてみたい。これまでも、文学記念館といわれるところは多く訪れたが、その目的のひとつに、原稿用紙に書かれた作家の筆跡を見ることであった。とくに、鎌倉や古河でのそれが妙に印象的で、むろん、大阪の司馬遼太郎記念館でもしかりで、執筆原稿のみならず、原稿用紙に書かれた書簡や手紙の類も、大いに興味をそそられた。
 正岡子規が松山の城下を詠んだ「春や昔、十五万石の城下かな」は好きな句である。もうひとつ、「梅が香を、まとめておくれ窓の風」も良い。前回、初めて松山に降り立ったとき、北陸の富山市街の情景と似た印象を持った。今回の南伊予の訪問では、旨い魚料理と酒を楽しみたい。

(追記)後日訪れた卯之町の「敬作の路地」は、冬の凛とした静寂の中にあり、その翌日に立ち寄った内子町は、梅の香りに包まれた早春の陽光の中に輝いて見えた。

(以上)

豪雪の地で小説『峠』を思う

 2月になって、新潟県上越市の直江津に行く機会があった。今年の冬は、日本海側の各地で豪雪が記録され、上越地方でも一晩で1メートルの積雪があったことが報じられていた。現地では、除雪作業があちこちで行われていて、ホテルに迎えにきてくれた方は、春になれば溶けてなくなるものなのだから、無駄な仕事ですよね、などと話されていた。確かに、雪国は大変だ。
 今回の豪雪に出会ったからというわけではないが、雪国ということばを聞くと、いつも思い出す小説が、司馬遼太郎の『峠』である。幕末の長岡藩で生まれ育った河合継之助の物語で、その小説に登場する場面や言葉が、おぼろげながらも記憶に刻み込まれている。
 そのひとつが、「雪国は損だ」という河合継之助のつぶやきである。もし雪がなければ、防雪や除雪に費やされる膨大な労力と費用は無用になるのである。ましてや、江戸時代の話しとなれば、人々は移動する手段を持たず、交通は遮断され、孤立することもあろう。豪雪の現地にいて、除雪する人々や機械の動く姿を見て、改めて膨大な無駄という現実を痛感する。
 河合継之助といえば、「石という知識を、心の炎で溶かす」という、塾の後輩に話す言葉も、印象に残っている。じつはこの言葉は、『峠』を読んで知ったのではない。筆者がまだ20歳代のころ、勤務していた会社の社員研修で、当時の営業部次長のN氏が研修冒頭の挨拶で紹介したものであった。じつに河合継之助らしい言葉ではないか。書物に限らず、物事をじっくりと考えて、行動に移す、知識、見識、胆識の3識を具現化する心意気が伝わってくる。思い起こしてみると、筆者が司馬遼太郎の著作物を読み始めたきっかけとなったのは、この研修を受けてからかもしれない。
 そして、3つ目が、江戸留学を申し出る継之助が家老に向かって叫ぶ「人間をご存じない」というものである。勉強をするなら、なにも江戸まで行かなくても、長岡で十分できるはずという家老の説得に対して、投げつけるように言う言葉である。うまく説明をすることができないが、筆者を深く印象づけるものとして、いまでも折に触れて思い出す。
 見るだけであれば雪は美しい。しかし、多くの人々の生活を阻害する要因にもなる。物事には、常に表の顔と裏の顔があるということであろう。

(以上)

「残酷すぎる成功法則」を読む

 いろいろなことが書かれている本である。エリック・パーカー著、橘玲監訳、竹中てる実訳のこの本の副題は、「9割まちがえる「その常識」を科学する」、とある。一読させていただいた中で、関心を持って箇所を抜き書きしてみたい。
 まずは海賊船について、すこぶる民主的なところだった、という話から始める。その理由として、すべての規則は全員一致で承認されること、船長は何かの理由で罷免されるので「しもべ」のような存在に近づいたこと、船長が全権を掌握できたのは生死に関わる即断を強いられる交戦中のみだったこと、を挙げている。海賊は、人々が喜んで働きたくなるような「会社」を形成していたのだ。他の船員と比べて船長の給与や生活環境も大きな差はなく、報償制度、福利厚生、手当、人種的多様性が整い、海賊は人材の補充に苦労しなかったという。片や、英国海軍は兵士を確保するために強制的な徴兵に踏み切らざるを得なかったらしい。海賊の統治法は、船員に十分な秩序と協力関係を行き渡らせ、それにより海賊は、史上最も洗練され成功した犯罪組織になったようだ。経営品質の考え方にもつながる事例であろう。
 ふたつ目は、楽観主義の薦めといったことである。楽観主義は、健康状態を良くし寿命を延ばすこと、成功を期待しながら交渉に臨むと結果に満足できる可能性が高まること、そして、楽観主義者は幸運に巡りやすくなり、ポジティブに考えることでものごとを辛抱強く取り組み、自分により多くの機会をもたらすことができること、などに触れている。しかし、楽観的であれば良いというものではないようで、正確性においては悲観論者のほうが高いとも言っている。心に留めておきたいところだ。
 三つ目は、ドラッガーの言葉に言及していることである。ドラッカーは、時間が最も希少な資源と考え、自分の目標を達成するうえで、その進捗に寄与しないすべてのもの断つことを人に薦めていたという。すべての事業、すべての活動、すべての業務を絶えず見直し自問し、確実に自分の仕事や組織のパフォーマンスに結果をもたらす限られた数の業務に集中できるようにすることの重要性を唱えていたのだ。数年前に本の出版を決意しながらも、だらだらと時間ばかりが過ぎていく筆者には、耳の痛い教えである。また、この考えは、全体最適経営のフレームワークにもつながるものであろう。
 最後に自戒を込めて「固定スケジュールによる生産性」を記しておきたい。所用時間を全く考慮しないTo Do Listを作るより、すべてを予定表にすることが、現実的で有効な唯一の方法であることを強調していることは、目から鱗といった驚きを持って読んでみた。そして、自分だけの時間を作り、バッチ処理で業務をこなすことがポイントだそうだ。だらだら行う仕事よりも、もっとメリハリのある仕事の作法があるんだよ、という囁きが聞こえてきそうな下りである。

(以上)

「CSVは文法」について考える

 今年度の修士論文指導のなかに、CSV(Creating Shared Value)に関するテーマについて論文を書いている院生がいる。しぜん、CSVを扱った書籍や論文に目が向くのであるが、その中の一冊が、『CSV経営とSDGs政策の両立事例』(近藤久美子著、ナカニシヤ出版、2017年10月)であった。そういえば、前述した院生も、彼の論文にSDGs(The Sustainable Development Goals)の大分類と17目標を事例各社のCSVの取り組みと対比させながら、CSV活動やKPIの妥当性の分析を進めていた。
 近藤氏の冒頭の一節に、同氏の前書『企業のコミュニケーション能力:仕事は単語、キャリアは言語、CSRとCSVは文法』(近藤2013)が紹介されている。このタイトルは、筆者の目を引いた。たぜならば、この言い回しをマネジメントシステム(MS)やビジネスエクセレンスモデル(BEM)、それにバランススコアカード(BSC)のフレームワークに照らし合わせてみると、「目標や行動は単語、戦略やBSCは言語、MSやBEMのフレームワークは文法」と言い換えることができると考えたからである。同氏の提唱を使わせていただくと、フレームワークを文法と解釈することは、MSやBEMを展開し運用している現場の理解が得られやすい、優れた表現だと感じた。
 近藤氏の書籍のなかで展開されているテーマは、「共通価値の創出パターン分類」と名付けられたフレームワークである。マトリックス図で4つの領域を区分し、縦軸はCSV事業の対象者で、上部がB2B:対法人、株がB2C:対個人と定義している。また、横軸はCSV事業領域で、左側がSDGs多い(職務拡大)、右側がSDGs少ない(職務充実)となっている。それぞれの領域について、各章で詳細な研究成果を述べられおられた。
 そして、CSVとSDGsのつながりにおいては、
・SDGsの該当数が少なくても、社会との共有価値を見出し、ビジネスとして成り立っていれば、SDGsの数は関係なくCSVであること。
・CSVとSDGsは同じ方向を向いているにもかかわらず、双方の距離感を縮める機会を模索中のプロジェクトは意外と多く、SDGsでは、企業の一層の参画が期待されていることへの認識が、まだ十分ではないこと。
などのご意見を披露されている。
 また、「CSV経営は、ブルー・オーシャン開拓のためと言っても過言ではない」とし、現在の日本のCSR活動が、レッド・オーシャン化していると喝破している。貴重な時間・費用・人的資源を投入しているにもかかわらず、他社との差別化が図られていないため、ソーシャル・インパクトに欠ける社会活動になっているのではないかというのである。SDGsなどの国際的は、今、私たちに何ができるのかを、問い掛けているように思えるという近藤氏の意見には、傾聴に値する思いがする。

(以上)

桜美林大学大学院経営学研究科「ビジネス戦略セミナー」開催のご案内

 2013年度から桜美林大学大学院経営学研究科に「国際標準化研究領域」が開設されて以来、本セミナーは、経営学研究科の活動と国際標準化の重要性を企業関係者および地域社会に広くアピールする目的で、毎年相模原市産業振興財団、相模原市・町田市と連携し、定期的に開催しています。第11回目を迎え、「国際標準を取り巻く最新動向と企業経営の課題」と題し、四谷キャンパス(千駄ヶ谷)にて半日のビジネス戦略セミナー(参加費無料)を開催します。どうぞお気軽にご参加ください。

◆日時
2018年2月15日(木)13:30~17:30(受付開始13:00)
◆場所
四谷キャンパス(千駄ヶ谷校舎)1階ホール(JR千駄ヶ谷駅下車、徒歩数分)
◆参加費
無料
◆定員
70名

◆プログラム
13:30 開会および司会
境睦 (桜美林大学大学院経営学研究科長・教授)
13:35 開会のご挨拶
小池一夫 (桜美林大学副学長)
13:45「国際標準化の新潮流」
・副題:標準化を巡るグローバル及び国内での動向(サービス領域を含む)
・講師:大塚玲朗氏(経済産業省産業技術環境局基準認証政策課)
15:10「中堅GNTのダイナミック・ケイパビリティ戦略:続編」
・副題:事例から学ぶ現状突破の条件と成功要因
・土屋勉男(桜美林大学大学院経営学研究科特任教授)
15:50「ファインバブル標準化の事例から学ぶ」
・副題:ファインバブルに学ぶ標準化の物語
・講師:原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
16:30「マネジメントシステム(MS)・コーディネーターの養成の意義と期待」
・副題:全体最適経営に資するMS人財育成とリスクマネジメントの新潮流
・講師:高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
17:10 質疑応答及び総括
境 睦(桜美林大学大学院経営学研究科長・教授)
17:30 閉会

◆お申込み
電子メールで高橋宛(ytakaha@obirin.ac.jp)にお申込み下さい。
当日の受付も可能ですが、資料準備のため事前のお申込みをお願いします。

皆さまのお越しを、心からお待ちしています。

(以上)

因果関係と相関関係について考える

 かねてより、経営の目標や施策における因果関係というテーマに関心を持ってきた。そのはじまりは、バランススコアカード(BSC)の4つの視点(財務の視点、顧客の視点、プロセスの視点、学習と成長の視点)における相互の因果関係の重要性について着目しはじめたことから始まる。
 バランススコアカードを作る場合、5つの留意点がある。一つ目は、設定されたそれぞれの目標は、組織や部門が最終的に達成すべき目標(例えば戦略目標、中期事業計画、等)の実現につながるように策定されていることである。ふたつ目は、4つの視点の因果関係が考慮されていること。三つ目は、重要成功要因の選択基準が明確であること。四つ目は、成果指標が重要成功要因の達成状況を正しく把握できること。そして、五つ目が、計画(企画)、実行、評価、結果のバランスと評価(PDCA)を行っていることだ。この中にもあるように、4つの視点間のみならず、戦略目標や重要成功要因同士の因果関係も、バランススコアカードのキーポイントといえる。詳細については、拙書『使えるバランススコアカード』(PHPビジネス新書)をご覧いただければ幸いである。
 因果関係をテーマに取り上げた書籍のひとつに、『データ分析の力、因果関係に迫る思考法』(伊藤公一朗著、光文社新書、2017年)がある。実際に読ませていただいたところ、筆者にとっては、難しい本の1つに挙げられるのではないかと感じた。これは、まったく筆者の勉強不足に起因するものであるが、その中で興味を引かれたのが、「因果関係は相関関係とは違う」という一節であった。同書によれば、2つのデータの動きに関係性があることを、統計学では「相関関係がある」と呼ぶ、とある。そして、問題は、たとえばXとYに相関関係があることがわかっても、その結果を用いて因果関係があるとは言えないこと、なのである。そして、現場のビジネスを考えた場合、物事を決定する際に鍵となるのは、多くの場合「因果関係」であり、相関関係ではない、ということを明確に示されている。いずれにしても、筆者が標榜するビジネスの世界では、やはり因果関係というものが、経営の意志決定を支援するひとつの目のつけどころであることは、間違いないのではないだろうか。
 ところで、同書から学んだことのひとつに、「ランダム化比較試験RCT)」がある。RCTは、同書の基本的はテーマであるからして、注目するのは当然の流れではあるが、たとえば、消費者をランダムにグループ分けして、介入グループと比較グループを編成し、介入グループに電力価格の変化を与えた結果と、変化を与えない比較グループの結果とを比較して、「もしも電力価格の上昇という介入がなかった場合、2つのグループの電力消費量の平均値は等しくなる」という仮定をみたすことができるかを、分析していくものと理解した。また、医療費自己負担額の大小で変化する月年齢別の外来患者の比較データや、税込価格を表示すると税抜き価格を表示した場合に比較して平均的にどのくらい売上が変化するのか、などの事例も、興味深いものであった。
 同書の著者である伊藤氏が、あとがきに『環境経済学への招待』(植田和弘著、丸善ライブラリー)という新書に感銘を受けたと書いている。筆者も、ぜひ読んでみたい。

(以上)

ナゴヤが生んだ「名」企業

 名古屋という地域は、名古屋人にしても企業にしても、独特の文化を感じさせるところである。その名古屋の企業について書かれた書籍(日本経済新聞社編(2017)『ナゴヤが生んだ「名」企業』日本経済新聞出版社)を読んでみた。
 書籍の「はじめに」には、「名企業」の由来は名古屋の「名」と、名門とか優れたという意味の「名」の掛け言葉であると、述べられている。地名をカタカナで「ナゴヤ」としたのは、対象企業を愛知、岐阜、三重のナゴヤ経済圏全体に広げようと考えたためだという。確かに、ナゴヤの企業の名鑑と思えるようなイメージの本に仕上がって、読んでいてナゴヤ地域の企業風土といったものが、読み手の体内に浸み込んでくる想いがした。
 貴重な事例や取材から、多くの学ぶべきことがあったが、なぜか、井村屋の話しが印象に残った。それは、コメ相場で失敗し、後がなくなった井村和蔵が、家庭で作られていた「あずき」の羊羹の効率的な製造方法を編み出し、それを継いだ長男の二郎が仲間たちと「株式会社井村屋」を設立し、即席ぜんざいなど「あずき」を使った新商品が市場から受け入れられた話からはじまる。個人商店から法人組織へと脱皮する重要な時期のことである。西洋的な発想と材料にとらわれていたアイスクリームの新市場開拓に苦戦していた中、「俺らの得意なあずきがあるやないか」と和菓子とアイスを融合した「あずきバー」が生まれた。また、肉まんは、冬になるとアイスのケースが空っぽになることに目をつけ、冷凍ケースの代わりにスチーマーを置き、肉まんを売り始めたのが、きっかけだったという。出来立て感覚で食べられる点が受けて、夏はアイス、冬は肉まんという、販売の平準化を果たした。この季節変動における販売の平準化は、多くの企業が持つ悩みであろうから、参考になるエピソードではないか。経営品質でいえば、ベンチマーキングになるところか。
 この連載を終えて編集部長の発田氏が回想していたことは、名企業の物語には、続編があるということだった。次世代の自動車産業、リニア中央新幹線のプロジェクトなど、ナゴヤの名企業の挑戦が今後の数十年で何を生み出すのか、その成否は日本経済の行方に大きな影響を与えるという意見には、賛成である。なお、個人的な気づきであるが、もし可能あれば、本書に「あとがき」を書き添えてもらえると良かったなか、と感じた。

(以上)

 

「あるべき姿」と「仮説・検証体験」

 新年に受け取った日経ビジネス誌(1月8日号)の巻頭言「有訓無訓」に、サッポロホールディングス会長の上條努氏が、『気持ちを素直に出して、おかしいと思えば変える、攻めてこそ人生は楽しい』というタイトルの談話を、披露していた。
 このコラムの中で気になった用語は、「あるべき姿」と「仮説を立てて実行し検証する」という2つのキーワードである。
 「あるべき姿」は、経営者のリーダーシップとして、組織の方向を示す場合によく使われる用語であり、「仮説→実行→検証」もマネジメントのPDCAとして頻繁に出てくる基本的なフレームワークとして考えられるものである。
 上條氏は、サンフランシスコ支店長時代に米国で総代理店の契約を結んでいる企業があり、その企業が米国各地の問屋に商品を卸していたことを振り返り、これではメーカーとして主体的にブランドをコントロールできないという問題を指摘した。
 ここで、「あるべき姿」が語られる。彼は、やはり同社(サッポロビール)が各問屋に直接商品を卸すのが「あるべき姿」であり、総代理店の契約は、やめようと思ったという。
 この提案に対し、東京の本社では、歴史ある取引を変更することを懸念したが、結局、押し切った結果、ビールの販売数量を全米で9割増やすことができたという。
 おかしいと思ったことは直す、という基本的な考えを持ち、思い切って仮説を立てて実行し、検証するという体験が、経営者としての自信を持たせることになったのである。
 その後、同社が直面する国内市場シェア低迷や、社員のモチベーション低下などの経営課題に直面する状況においても、その体験が役に立ったことであろう。
 新年にあたり、ビジネスエクセレンスモデル(経営品質向上のフレームワーク)におけるリーダーシップや方針と戦略に関連する「あるべき姿」と「仮説と検証」について、再考する機会ではあった。

(参考:上條努「有訓無訓」『日経ビジネス』2018年01月08日号、p.Ⅰ)

サービス業としての「ユニクロ」に見るBSC的考察

 ユニクロのホームページを見ると、「ユニクロのビジネスモデル」というページがある。R&Dからカスタマー・クリエーション・チームまでのプロセスを順番に解説したもので、製造小売り(SPA)も含まれている。その中で筆者の興味を引いたのは、「匠チーム」の存在だ。技術を伝えるだけではなく、工場で働く人々の生産管理に対する心構えを変え、より良い工場に成長させ、日本の優れた技と心を次世代の技術者へ伝承していく役割を担っている。ユニクロのホームページで紹介されている経営情報をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで整理してみると、次のようになろう。

〇財務の視点
・財務目標の達成
〇顧客の視点
・顧客満足(顧客のライフスタイルをつくるための価値提供)
〇変革プロセスの視点
・商品開発 ☞ R&D、マーチャンダイジング(コンセプト会議)
・仕入れ  ☞ 素材開発・調達(大量素材発注による競争優位、
       ヒートテックなどの機能性新素材共同開発、等)
・生産・在庫☞ SPA、在庫コントロール、売り切り売価戦略 
・店舗運営 ☞ IT化で生産性向上、品切れ防止、販売目標 
・集客・販売☞ マーケティング、Eコマース、顧客創造チーム
〇学習・成長の視点
・生産部・匠チーム(工場の課題解決、生産管理、技術伝承)
・働く人々のサービススキル・ヒューマンスキル向上
・経営理念・方針・戦略・行動規範・マネジメントシステム

 これらの重点目標について、もし自分自身が経営者だった、あるいは担当責任者だったら、どんなKPI(Key Performance Indicator)を設定して「うまくいっているかどうか」を測定し判断していくのだろうか。そんな想いを抱いて、3つのKPIについて考えてみたい。
①まず最初に「大量素材発注による競争優位」についてである。素材や部材を大量に発注すれば、当然単位当たりのコストは下がる。もし品質と納期が同じ条件であれば、他社と比べて安価なアパレル商品を市場に提供することができるから、競争に勝てる、すなわち競争優位なビジネスを進めることができよう。よって、もし筆者が調達の担当責任者であれば、KPIは「発注単位当たりの金額(コスト)」、計算式は「発注金額(¥)÷発注数量(または重量)x100(%)」とし、この数字が小さくなるように調達業務を進めていく。
②次は「品切れ防止」である。もし筆者が店舗運営の担当責任者であれば、KPIは「毎月の品切れ発生率」、計算式は「1か月での品切れ商品数÷全商品数x100(%)」でも良いし、あるいは単に「毎月の品切れ発生回数」でも良いだろう。店長は、それらの数字を小さくしていくよう改善に取り組み、機会損失(販売機会逸失)を無くし、顧客満足を高めることが必要だ。
③最後に、生産部や匠チームによる「工場の課題解決」は、KPIを「工場課題解決率」、計算式を「課題解決件数÷課題解決依頼数x100(%)」とし、これはだんだんと大きくしていくと改善されていると判断できよう。野球でいう打率と同じだ。このKPIの測定数字が限りなく100%に近づいていけば、生産部や匠チームのサービスを受けている社内顧客の満足度は高くなっていくし、感謝される彼らのモチベーションも高まっていくことは間違いない。
 KPIの設定は、その部署が置かれている状況や目指す経営目標によって変わってくる。よって、筆者が設定したKPIとは違うKPIが設定されることは十分考えられる。妥当性あるKPIを設定するには、「あなたのその仕事は、何のために行っているのか」によって決まるのではないか。

(以上)

桜美林大学大学院経営学研究科 第10回ビジネス戦略セミナー(9月11日・無料)

 本公開セミナーは、2013年度から桜美林大学大学院経営学研究科に「国際標準化研究領域」が開設されて以来、定期的に開催しています。このたびは第10回目を迎え、「国際標準を取り巻く最新動向と企業経営の課題」と題し、四谷キャンパス(千駄ヶ谷)にて半日のビジネス戦略セミナー(参加費無料)を開催します。今回は、「企業が知っておきたいマネジメントシステム、標準化、成長戦略の抑えどころ」についての紹介も行いますので、どうぞお気軽にご参加ください。

●プログラム
13:30~13:35  開会および司会~境 睦 (桜美林大学大学院経営学研究科長)
13:35~13:45  開会のご挨拶~ 小池一夫 (桜美林大学副学長)
<テーマ1:ISO認証の新展開>
13:45~14:30  ISO認証をめぐる最近の動向と課題(仮題)
・大塚玲朗氏(経済産業省基準認証政策課)
14:30~15:15 部分最適が組織を滅ぼす:全体最適化経営におけるマネジメントシステムと人材育成(仮題)
・高橋義郎(桜美林大学大学院経営学研究科教授)
<テーマ2:競争優位の構築とDC戦略>
15:30~16:15 日米欧標準化戦争の真実(Suicaなどの事例紹介)
・原田節雄(桜美林大学大学院経営学研究科客員教授)
16:15~17:00 中堅GNTのダイナミック・ケイパビリティ戦略(現状突破の要因と条件)その2
・土屋勉男(桜美林大学大学院経営学研究科特任教授)
17:00~17:25 質疑応答及び総括~金山 権 (桜美林大学大学院経営学研究科教授)
17:25~17:30 閉会
 
●会場及び開催日時 
日時:2017年9月11日(月)13:30~17:30(受付開始13:00)
会場:桜美林大学四谷キャンパス(千駄ヶ谷)、1階ホール
参加費:無料
定員:70名
お申込み方法:下記までご連絡下さい。
(当日の受付も可能ですが、資料準備のため「事前のお申込み」をお願いいたします)
 
●お申込み先・お問い合わせ先
桜美林大学大学院経営学研究科 高橋まで (電子メール: ytakaha@obirin.ac.jp )
 
●共催・後援(予定)
共催:相模原市産業振興財団  後援:相模原市 及び 町田市
 
(以上)

本日の講演で紹介した「マネジメント計画書」をアップします

本日はご多忙のところ、相模原市産業振興財団様共催「桜美林大学大学院経営学研究科第9回ビジネス戦略セミナー」にご来場いただき、誠に有難うございました。「マネジメントシステムの落とし穴」で紹介した図表をアップします。ISO9001:2015年版の運用でのご参考になれば幸いです。

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