高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

岐阜に見る県民性のバランススコアカード(BSC)的考察

 来週、久しぶりに岐阜県に行く仕事ができた。そのせいか、以前に書いた「県民性のバランススコア的考察シリーズ:岐阜県の巻」の原稿を読み返してみたくなった。以下は、そのシリーズの再掲である。

 およそ20年ほど前に、岐阜県の郡上八幡を訪ねたことがある。美濃での業務出張を終えた翌日の土曜日のことで、朝から雪が降りしきる中をレールバスで郡上八幡駅に着いた。斎藤美術館に行ってみようと歩き始めたのだが、開館にはまだ早く、近くの喫茶店で時間を過ごすうちにも雪は降りつもり、白い雪のベールが、古びた町並みを誠に見事に覆っていて、いやがうえにも美濃路の旅情を掻き立てる。店の人に斎藤美術館への道を聞いたところ、この雪では閉館するのではないかと言うので急いで電話をかけて来意を告げ、「お待ちしています」という快い承諾を得ることができた。郡上八幡は、郡上踊りなど町民文化が燗熟し、宗祇水などに代表される水の美しい街としても有名な小京都でもある。斎藤美術館はその街の中心に位置し、斎藤家が江戸時代以来270余年にわたり茶人として代々収集愛用してきました書画・茶道具を中心とした美術工芸品を、一般の愛好者・数寄者のための展観している。とくに興味があったのはその庭にある「水琴窟」である。水琴窟は "つくばい" や "縁先手水鉢" の鉢前に仕掛けられた、日本式庭園技法の一つで、埋めてある瓶にしたたり落ちる水滴が美しい水滴音を奏でる。

 ところで岐阜のことである。「飛山濃水」ということばがある。岐阜が山地の飛騨地方と低地の美濃地方とから成り立っているということを示しているわけなのだが、飛騨の国が山に囲まれて開発が最も遅れた僻地であったのに対して、美濃の国は東西交通の要路として早くから開けていた。そして江戸時代には、飛騨は幕府直轄の天領であったのに対して、美濃は小藩分立であった。こうした状況であったから、飛騨と美濃とではいろいろな意味で大きな相違が存在してきたのである。飛騨地方の著しい貧しさの上に立った孤立性と後進性は、素朴で純粋だが閉鎖的な面もあわせ持ち、著しい勤勉さも忘れてならない大きな特徴である。こうした飛騨に対して美濃の国は、「美濃を制する者が天下を制する」と言われたくらい戦が多かった。為政者が変ることが多く、とくに江戸幕府はここに力の強い大名が出ないようにと、多くの大名や旗本に分割統治させた。そのために領民の間では隣の村が味方なのか敵なのかわからない時期もあり、人々は為政者に多くを期待せず、互いに一致団結して身を守ってきたのだった。こうした歴史が、他国者には気を許さない美濃人の性格をつくり上げている。一見、つきあい上手のようだが、なかなか腹を割っては話さないタイプなのだ。濃尾平野はまた、輪中で知られる洪水地帯でもあった。同じ輪中内の人々は生き残るために団結するが、ほかの輪中には構っていられない。これが「輪中根性」といって自分本位な性格を生んだともいわれている。

 美濃の人は締まり屋といわれる。隣合う名古屋は、昔から「難波の銀と江戸の金の差額」で利益を上げて食っているといわれたが、美濃はその名古屋相手に商売してきた国である。なまじの金銭感覚では成功できないわけで、ただし人あたりはいい。政治的にも経済的にも、目まぐるしく変わる支配者のもとでは器用に立ち回るしかなかった。そんな美濃人だから、商売上手なのはたしかで、柔和な表情からは想像もつかない策略や奇策が飛び出したりする。しかし、自主性にはやや欠けるところがあるといわれる。つねにバランスを考え、周囲の動きを見極める判断力はあるが、こうと決めたらとことんやりぬくといった一徹さや、先頭に立って集団をリードしていくような力強さがない。どちらかといえば、要領のいいタイプということになるのだろうか? 

 そのような県民性を踏まえてみると、岐阜という県民性の経営戦略は以下のようになるのではないか。読者の意見を待ちたい。

◆財務の視点

・産業や観光の財政収入増加

・県民一人当たりの総生産(総収入)の増加

◆顧客の視点

・岐阜県物産品や商品の再注文数増加

・岐阜県観光の再来県者増加

・顧客や市場の変化を先取りした商品やサービスの提供

・ビジネスと観光を取り合わせたトラベルサービスの提供

◆プロセスの視点

・顧客の視点に立った産業・観光の価値創造

・美濃地方産業界の取り纏めと活性化

・独創的な物産や商品の開発

・飛騨地方観光資源のプロモーション

・古き良き日本の哀愁をかもし出す飛騨観光資源の再評価

◆学習・成長の視点

・産業界でのリーダーシップある人材の養成と排出

・独創的な開発を継続的に出来る人材の育成 

(参考:「県民性の人間学」祖父江孝男著・新潮OH!文庫、「郡上八幡ホームページ」)

(以上)