高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

神奈川に見る県民性のバランススコアカード的考察

 JRの湘南新宿ラインが開通してから、筆者が住んでいる川口から鎌倉が近く感じられるようになった。その理由は、川口駅のひとつ隣駅の赤羽から鎌倉まで直通で行けるようになったからである。実際のところ所要時間の長短は気にならないが、ひと駅先で乗れる(帰りの場合はひと駅先で帰れる)という便利さは、気分から言えば大いに有難いことである。

 学生時代からほぼ季節ごとに鎌倉を訪ね歩いてきたが、やはり鎌倉は春と秋がいい。古都の桜の季節は、まさに由緒ある風かほるという表現がぴったりであり、「きんもくせい」の凛としたあまずっぱい香りが漂う季節は、鎌倉の古寺のみならず、ひっそりとした品の良い住宅地に来ていることを実感させてくれたものである。季節毎に訪れる鎌倉というところは、湘南の海も含めて、いつの時期でもそれなりの風流さと新たな発見を与えてくれる場所なのである。

 鎌倉といえば鶴岡八幡宮があまりにも有名だが、その八幡宮からJR横須賀線の踏切を超えた反対側に筆者の好きな古寺のひとつである寿福寺がある。寿福寺は、とくに敷石に導かれる参道が良い。寺の入り口から中門に至る参道を眺めていると、まさに鎌倉時代への入り口を一服の絵で見ている想いがする。鎌倉市の関連情報をWEBで見てみると、寿福寺は1180年に北条政子が頼朝の父、義朝の旧邸跡に明菴栄西を招いて創建したという。三代将軍実朝もしばしば訪れ、最盛期には十数か所の塔頭を擁する大寺であったそうで、鎌倉五山の第三位という位置づけである。(写真:寿福寺の中門へ)

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 ところで、言うまでもなく鎌倉は神奈川県にある。神奈川県は都会的な県だといわれている。実は国立公園の箱根も丹沢山地を含む丹沢大山国定公園もこの神奈川に属するのだが、横浜はもとより、横須賀、鎌倉は大都市であり、逗子、三浦、葉山町、などは別荘地であるほか高級住宅地でもあり、いずれも東京への通勤が盛んに行われており、東京の文化の影響は極めて大きい。「湘南」と呼ばれる地域にも、藤沢、茅ケ崎、平塚、小田原などの都市が並んでいる。こうしてみると、神奈川は都市的、都会的な県だとわかるのだが、県民性にも非常に大きな特色があるようだ。

 かつて、ある研究所が行った全国県民意識調査では、「お互いのことに深入りしないつきあいがよい」「神でも仏でも何か心のより所になるものがほしい」「国や役所のやることには従っておいたほうがよい」「地元の面倒をよくみる政治家をもりたてたい」という意見に対する賛成の答えはいずれも全国で最低。それから「地元の行事や祭りには積極的に参加したいと思いますか」「隣近所とのつきあいは多いですか」「隣近所の人には信頼できる人が多いですか」「職場や仕事、商売でつきあう人とは仕事以外のことでもつきあうことが多いですか」という問に対しての肯定の答えは最低から3番目であったのだ。

 要するに極めて都会的性格がつよいのであって、個人を尊重することをいつも中心に考え、なにごとにおいても合理性を重視する、これが神奈川県民の考え方の特徴だと言えるだろう。なおこうした特質は特に「浜っ子」と呼ばれる横浜の市民によくあてはまる。よそ者に対する閉鎖的な意識もあまり無いのだ。しかも民主的というか、総花的とでもいうのか、全員に平等なチャンスを与えようとする傾向が強い。また、横浜の人はつきあいが上手で、折衷案を出すのがじつにうまいという。そういった明朗さが神奈川県民の長所といえるのだが、気候にも恵まれ、開放的な土地柄だけに競争心や忍耐力はあまり強くない。よくも悪くも「民主的」なのが、この県の特徴ということになるだろう。

 少し前の話になるが、「中長期的課題と将来ビジョン」という報告書が神奈川県総合計画審議会計画推進評価部会というところから出されていた。今回はこの報告を参考にしながら、同県のビジョナリー経営の方向をBSCにまとめてみた。読者の意見を待ちたい。

<財務の視点>
・神奈川のポテンシャルを生かして地域の活力を生み、ゆとりある生活の実現
<顧客の視点>
・県民の個々人の多様性を生かし安心して暮らせる社会環境と実現
・科学技術の振興による県民や地域の活性化の実現
・神奈川の観光と産業のブランド向上
<プロセスの視点>
・新産業創出と既存産業の高度化推進プロセスの実践
・地域に根ざした産業の推進
<学習と成長の視点>
・県民のネットワーク社会の実現
・雇用の確保と産業人材育成の実践

(参考:「県民性の人間学」新潮OH文庫・祖父江孝男著、「神奈川県庁ホームページ」、「鎌倉市ホームページ」、他)