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高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

経営品質の散歩道(13) 『やさしい経営学』に見る理論と実践

 日本経済新聞社が編集した『やさしい経営学』という本がある。本棚から取り出して改めてパラパラとめくってみると、300頁近い紙面のあちこちにマーカーやメモをしたためた箇所が見られる。それほどにこの本を読み込んでいるかといえば、実はそうではない。ただ、いままで漠然とした知識として持っていた経営学の断片的なものが、活字を通して理論と実例が体系的に見えてきたという意味で、筆者にとって得難い書籍となった。

 同社の経済解説部が、その冒頭に「経営とは何か」と問うている。そこでは、どんな組織が求められているのかを根本から考える方法が学べるもの、とある。そして、その方法論は会社だけでなく、学校や団体など共通の目的を持ったグループ、あらゆる組織にもあてはまり、優れた経営、強い組織の動き方、特徴を理論的にまとめて、学びを活かせる形で示し、戦略論と組織論が二つの大きな柱となっている、と述べている。それらの内容を、野中郁次郎、伊丹敬介、藤本隆宏、御手洗富士夫、新宅純二郎、鈴木敏文、柳井正、沼上幹、加護野忠男、守島基博、高橋伸夫、他の経営学や経営の先駆者が書き語っている。

 仕事柄、やはり目についてしまうのはバランススコアカード(以下、BSC)や経営品質のフレームワークである。たとえば、この書籍には「競争力とは多面的・多層的な概念」という稿がある。その概念を解説した図には、競争力の多層構造として、組織能力→裏の競争力→表の競争力→収益性、といった因果関係が掲載されている。組織能力は、トヨタ方式など、裏の競争力は生産性など、表の競争力は価格など、そして収益性は売上高・利益率など、と注記されているが、取りも直さず、BSCの4つの視点(学習と成長→(変革)プロセス→市場・顧客の視点→財務の視点)の因果関係(フレームワーク)と類似していることに注目したい。

 また、キャノン御手洗社長(当時)によれば、「経営とは、技術や社会の動向について仮説を立て、それを実行し検証しながら、間違っていれば修正していくプロセスだ。中長期の目標を立ててはいるが、日々、修正が必要になる」とある。セブンイレブンを立ち上げた鈴木敏文(元)会長も、常々同様の信条を披露しているが、経営のPDCA,すなわち経営のマネジメントを語る卓見であろう。なぜならば、経営の対象は人、モノ、カネから社会まで幅広く、それらは常に変化をしていくものという背景があるからだ。よく聞く話であるが、中期経営計画はどのくらいの頻度で見直し・修正すれば良いのですか、などという愚問を発する経営企画部門の方々には、噛み締めてほしいところである。

 経営品質賞のフレームワーク(ビジネスエクセレンスモデル)について触れれば、この書籍に書かれているほぼすべてが同フレームワークで説明できると言えよう。ただ読み流すのも良いが、BSCも含めて、自分なりに納得感のあるフレームワークを照らし合わせながら読んでいくことも、無駄ではないと思う。なぜならば、書いてある内容とフレームワークとを比較しながら読んでいくと、そこに見えてくるギャップにこそ「思考の機会」が生まれてくるからではないだろうか。読者の意見を待ちたい。

参考:日本経済新聞社=編(2008:第6刷)『やさしい経営学』日経ビジネス人文庫、日本経済新聞出版社

以上