高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

サービス業としての「ユニクロ」に見るBSC的考察

 ユニクロのホームページを見ると、「ユニクロのビジネスモデル」というページがある。R&Dからカスタマー・クリエーション・チームまでのプロセスを順番に解説したもので、製造小売り(SPA)も含まれている。その中で筆者の興味を引いたのは、「匠チーム」の存在だ。技術を伝えるだけではなく、工場で働く人々の生産管理に対する心構えを変え、より良い工場に成長させ、日本の優れた技と心を次世代の技術者へ伝承していく役割を担っている。ユニクロのホームページで紹介されている経営情報をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで整理してみると、次のようになろう。

〇財務の視点
・財務目標の達成
〇顧客の視点
・顧客満足(顧客のライフスタイルをつくるための価値提供)
〇変革プロセスの視点
・商品開発 ☞ R&D、マーチャンダイジング(コンセプト会議)
・仕入れ  ☞ 素材開発・調達(大量素材発注による競争優位、
       ヒートテックなどの機能性新素材共同開発、等)
・生産・在庫☞ SPA、在庫コントロール、売り切り売価戦略 
・店舗運営 ☞ IT化で生産性向上、品切れ防止、販売目標 
・集客・販売☞ マーケティング、Eコマース、顧客創造チーム
〇学習・成長の視点
・生産部・匠チーム(工場の課題解決、生産管理、技術伝承)
・働く人々のサービススキル・ヒューマンスキル向上
・経営理念・方針・戦略・行動規範・マネジメントシステム

 これらの重点目標について、もし自分自身が経営者だった、あるいは担当責任者だったら、どんなKPI(Key Performance Indicator)を設定して「うまくいっているかどうか」を測定し判断していくのだろうか。そんな想いを抱いて、3つのKPIについて考えてみたい。
①まず最初に「大量素材発注による競争優位」についてである。素材や部材を大量に発注すれば、当然単位当たりのコストは下がる。もし品質と納期が同じ条件であれば、他社と比べて安価なアパレル商品を市場に提供することができるから、競争に勝てる、すなわち競争優位なビジネスを進めることができよう。よって、もし筆者が調達の担当責任者であれば、KPIは「発注単位当たりの金額(コスト)」、計算式は「発注金額(¥)÷発注数量(または重量)x100(%)」とし、この数字が小さくなるように調達業務を進めていく。
②次は「品切れ防止」である。もし筆者が店舗運営の担当責任者であれば、KPIは「毎月の品切れ発生率」、計算式は「1か月での品切れ商品数÷全商品数x100(%)」でも良いし、あるいは単に「毎月の品切れ発生回数」でも良いだろう。店長は、それらの数字を小さくしていくよう改善に取り組み、機会損失(販売機会逸失)を無くし、顧客満足を高めることが必要だ。
③最後に、生産部や匠チームによる「工場の課題解決」は、KPIを「工場課題解決率」、計算式を「課題解決件数÷課題解決依頼数x100(%)」とし、これはだんだんと大きくしていくと改善されていると判断できよう。野球でいう打率と同じだ。このKPIの測定数字が限りなく100%に近づいていけば、生産部や匠チームのサービスを受けている社内顧客の満足度は高くなっていくし、感謝される彼らのモチベーションも高まっていくことは間違いない。
 KPIの設定は、その部署が置かれている状況や目指す経営目標によって変わってくる。よって、筆者が設定したKPIとは違うKPIが設定されることは十分考えられる。妥当性あるKPIを設定するには、「あなたのその仕事は、何のために行っているのか」によって決まるのではないか。

(以上)