高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

「残酷すぎる成功法則」を読む

 いろいろなことが書かれている本である。エリック・パーカー著、橘玲監訳、竹中てる実訳のこの本の副題は、「9割まちがえる「その常識」を科学する」、とある。一読させていただいた中で、関心を持って箇所を抜き書きしてみたい。
 まずは海賊船について、すこぶる民主的なところだった、という話から始める。その理由として、すべての規則は全員一致で承認されること、船長は何かの理由で罷免されるので「しもべ」のような存在に近づいたこと、船長が全権を掌握できたのは生死に関わる即断を強いられる交戦中のみだったこと、を挙げている。海賊は、人々が喜んで働きたくなるような「会社」を形成していたのだ。他の船員と比べて船長の給与や生活環境も大きな差はなく、報償制度、福利厚生、手当、人種的多様性が整い、海賊は人材の補充に苦労しなかったという。片や、英国海軍は兵士を確保するために強制的な徴兵に踏み切らざるを得なかったらしい。海賊の統治法は、船員に十分な秩序と協力関係を行き渡らせ、それにより海賊は、史上最も洗練され成功した犯罪組織になったようだ。経営品質の考え方にもつながる事例であろう。
 ふたつ目は、楽観主義の薦めといったことである。楽観主義は、健康状態を良くし寿命を延ばすこと、成功を期待しながら交渉に臨むと結果に満足できる可能性が高まること、そして、楽観主義者は幸運に巡りやすくなり、ポジティブに考えることでものごとを辛抱強く取り組み、自分により多くの機会をもたらすことができること、などに触れている。しかし、楽観的であれば良いというものではないようで、正確性においては悲観論者のほうが高いとも言っている。心に留めておきたいところだ。
 三つ目は、ドラッガーの言葉に言及していることである。ドラッカーは、時間が最も希少な資源と考え、自分の目標を達成するうえで、その進捗に寄与しないすべてのもの断つことを人に薦めていたという。すべての事業、すべての活動、すべての業務を絶えず見直し自問し、確実に自分の仕事や組織のパフォーマンスに結果をもたらす限られた数の業務に集中できるようにすることの重要性を唱えていたのだ。数年前に本の出版を決意しながらも、だらだらと時間ばかりが過ぎていく筆者には、耳の痛い教えである。また、この考えは、全体最適経営のフレームワークにもつながるものであろう。
 最後に自戒を込めて「固定スケジュールによる生産性」を記しておきたい。所用時間を全く考慮しないTo Do Listを作るより、すべてを予定表にすることが、現実的で有効な唯一の方法であることを強調していることは、目から鱗といった驚きを持って読んでみた。そして、自分だけの時間を作り、バッチ処理で業務をこなすことがポイントだそうだ。だらだら行う仕事よりも、もっとメリハリのある仕事の作法があるんだよ、という囁きが聞こえてきそうな下りである。

(以上)