高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

『経営事例の物語分析』を読む

 「企業盛衰のダイナミックスをつかむ」という副題がつけられたこの本は、企業の急成長、持続成長、停滞、衰退、消滅といった企業盛衰ダイナミクスの局面における結果が、なぜ生じたのか、その原因になりそうな諸条件を理論的に解釈しながら、因果関係を探っていくことを目指しているという。ちなみに、物語とは、結果を生み出す出来事の連鎖であると定義している。
 同書の中で、「ミクロ経営事例での出来事認識の枠組み」という図が紹介されている。その図には、フロント・フォーマット(顧客への価値提案)→バック・フォーマット(価値創造の仕組み)→財務システム(財務成果と資金管理)、がフロント・フォーマットに戻るという経営サイクルが示されているが、筆者が関心を持つのは、まさに財務システム(財務成果と資金管理)への因果関係の部分である。
 「出来事間の因果関係をたどれ」の節には、古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの言葉が出てくるのも、面白い。同書の紹介では、「ある出来事は、さきに生じた出来事から、必然的な仕方で起こる結果であるか、あるいは、ありそうな仕方で起こる結果でなければならない」と、アリストテレスが悲劇を主な題材にして、物語の形式的特徴を歴史上はじめて論じていることを、同書に掲載されているのだ。先の出来事は原因、後の出来事は結果、とする因果関係で結ばれることになるとの記述が続く。
 原因と結果との因果関係、非財務活動の成果が財務成果にどのような因果関係で影響を及ぼすのか、バランススコアカードにある因果関係などについて再考する良い機会を与えてくれた本であった。
(参考:田村正紀『経営事例の物語分析』白桃書房、2016年10月)