高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

経営に資するISOマネジメントのリスクと機会を再考する

 経営者の視点に見る「経営に資するISOマネジメントとリスク・機会」について考えてみたい。日本品質管理学会の公開セミナーのひとつに、「クオリティトーク」という会合がある。日本科学技術連盟の高円寺ビルで夕方から夜にかけて開催されるのだが、軽食を食べ一杯ひっかけながら講演者の話しを聞くこの会合には、筆者も何回か足を運んだことがある。いくつかのテーブルに分かれて着席し、席は指定されるため、毎回ちがったメンバーの方々と知り合う機会を得るのも、異業種交流の場として、なかなか良いものである。
 いままでに出席した会合のテーマは、ISO31000のリスクマネジメント(野口氏:横浜国大)、因果と相関の関係(同じ横浜国大の先生だったと記憶している)、そしてISOマネジメントシステムを経営の視点で講演されたテクノファの青木社長の話しである。その青木社長の講演(第110回クオリティトーク)の概要が、『品質』に掲載されていた。ビジネスエクセレンスモデル(経営品質賞)のフレームワークを実践してきた方々には、もっともな話だと合点をする講演内容であったろうが、その掲載文では、「リスクと機会」に青木氏の経営者としての想いが表れていると感じた。
 同氏の掲載文を再度見てみると、「事業運営をする上ではリスクはつきものである。一方で事業運営のことを意識すればするほど,先に考えるべきことはリスクではなく機会の方である。特に営利企業であれば収益獲得が常に求められる中で事業機会がどこにあるかを常に意識し、その機会から成果を挙げることは必須である。規格では、リスクおよび機会、という語順になっているが、その順番にとらわれすぎないことである。筆者(青木氏)は経営者という立場もあることから、日ごろの思考においては機会の方に9割以上の意識を向けているといってもよい。そのうえでその機会を追い求めていくにあたってその機会の裏に潜むリスクは何かという捉え方をしている。組織内での職位が上になればなるほど、規格の読み解き方は字義通りではなく,自組織の経営管理を考えた応用動作をしていってほしい。」と述べている。
 ISO31000(リスクマネジメントの指針)に深く関わってきた野口氏によれば、リスクマネジメントは、未来の指標を創ることであると、喝破している。とすれば、青木氏の言う「機会を追い求める意識が90%」というのも、経営者にとってみれば、ごく自然な想いであろう。一方、ISOマネジメントの現場では、規格の読み解きを論じている場面が多く見られる現実を見ると、やはり日本では真に経営に資するISOマネジメントシステムの構築と運用は難しいのかなと考え込んでしまうが、いかがであろうか。

(出所:青木恒享「経営力向上のためにISOを使いこなす方法ー認証取得は目的でなく経営の選択肢ー」『品質』日本品質管理学会、Vol.49, No.3, 2019、p.39)