高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

根強い集客力に見る100円ショップのBSC的考察

 国内消費の現場で100円ショップの存在感が高まっている。2019年度の店舗の増加数で100円ショップ大手4社の合計(310店)がコンビニエンスストア大手3社の合計(276店)を上回る見通しだ。スーパーなどが中核テナントとして誘致する動きも目立っており、小売業の力関係が変化しつつある。
 ちなみに、縦軸に「店舗数増加率」、横軸に「売上高増加率」で業界別のポジショニングをプロットしてみると、両方の因子ともスーパーやコンビニよりも高く位置にあるが、売上高増加率ではドラッグストアにかなわない。
 100円ショップの躍進の要因のひとつに、スーパーなどの誘致元の期待と満足が満たされていることにある。100円ショップで日用品を売ってもらい、誘致したスーパーは総菜や生鮮品の売りがを広げることができ、若い世代が来店してくれる客層の拡大を図ることができる。この場合、誘致するスーパーにとって100円ショップはビジネスパートナーとなる。
 二つ目の要因としては、台頭するネット通販への抵抗力もある。おしゃれな商品も増えて割安なので、送料もかからず、リアル店舗で選ぶ楽しさがあるということだろう。三つ目は、消費増税前後に消費者の節約志向の高まりもある。四つ目は、コストの安い海外での生産と商品輸入による低価格商品の提供である。
 その一方、成長する100円ショップにも課題がある。薄利多売のビジネスモデルなので、1商品あたりの粗利が小さいこと。そのため、人件費の高騰は他の小売業よりも重くのしかかる。そのため、人件費抑制のためにセルフレジやQRコード決済の導入も進めている。また、海外からの輸入が多いために為替相場の変動による調達コストの増加は、大きなリスクである。
 そのような100円ショップの経営目標をBSC(バランススコアカード)のフレームワークで書いてみると、以下のようになるのではないか。読者の意見を待ちたい。
<財務の視点>売上高の増大、営業利益の増大、1商品あたりの粗利の増大
<顧客の視点>来店者のリアル店舗購買満足度向上、誘致先満足度増大、若い世代の来店増加
<改善プロセスの視点>来客数増大、若年世代向商品充実(割安でおしゃれな商品など)、節約志向対応商品・顧客価値の増強、人件費抑制施策実践(レジ業務省力化など)、為替変動リスク対応策実施(調達コストなど)
<経営及び組織・個人能力の視点>ドラッグストアなどのベンチマーキングによる成長シナリオの見直し

 (出所:日本経済新聞、2019年7月13日、11面)