高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

ブックオフを潤す「デジタル疲れ」

 最近の新聞で「デジタル疲れ」と「オワコン」という言葉を目にした。オワコンとは「終わったコンテンツ」の略語で、業績が低迷してきた「ブックオフ」がそのネット用語で語られた。そして、デジタルサービスが広がる中、他者とのコミュニケーションを敬遠する「デジタル疲れ」という用語も出始めている。
 デジタル疲れがオワコンの「ブックオフ」の業績を復調させている(2019年4月~6月期前年同期と比べて売上高は6%増、純利益は2.9倍)というのが、その記事の内容であった。ブックオフの宿敵であるフリーマーケットアプリ大手のメリカリからの思わぬ恩恵で、商品発送など個人間取引の手間を嫌ってリアル店舗に回帰する消費者が増えているという。いわゆる「メルカリ疲れ」からの動きである。
 フリマアプリを通じた中古品売買は、スマートフォンで済む手軽さがあり、しかも買い取り価格はメルカリが優位だ。ある中古商品では、ブックオフが5千円とすると、メルカリは7千円などのような差があるという。だが、フリマアプリを使うと個人間で価格交渉をしたり、配送や梱包をするなど、手続きが面倒と考える消費者が実店舗に戻り始めた。
 そこで、ブックオフは、都心部を中心に書籍やブランド品などの買い取りを担う小型店「総合買取窓口」を広げ、所得水準の高い都市部での買取力を高め、大型店の品揃えを充実させるなどの新たな戦略を取り始めた。復調が一過性に終わるリスクもあり、ブックオフの経営におけるリスクマネジメントが試されている。ネットサービスが普及する中でも、リアルの強みをアピールし、デジタル疲れの消費者の潜在需要を取り込むことができるかが、店舗の生き残りを左右することになるだろう。
 本稿の最後に、中古品買い取りのリアルとネットの違いをまとめてみた。ちなみに、筆者はリアル店舗主義である。

◆リアル店舗(ブックオフなど)
・メリット:多数の本や雑貨をまとめて買い取る、買取価格は一律で交渉はない
・デメリット:買取価格が安い、ネットより商品を探しづらい
◆フリマアプリ(メルカリなど)
・メリット:スマートフォンで出品、買取価格はリアル店舗より高い
・デメリット:個人間で価格交渉する場合も、出品者が配送や梱包する

(出所:日本経済新聞、2019年8月16日、12面)