高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

コーチングとバランススコアカード(BSC)

 数日前の日本経済新聞の記事「ジョブ型雇用に上司の壁」を読んでいるうちに、もう20年ほど前になるでしょうか、勤務していた会社の管理職研修で、コーチングのワークショップに参加したことを思い出しました。ちょうどその頃、会社の内外でバランススコアカード(BSC)の研修講師をしていましたので、早速、コーチングの内容を教材の中に取り入れました。BSCは目標展開のツールあるいは考え方ですから、目標の下位展開をするときには上司と部下のコミュニケーションの良し悪しが、重要な成功要因になります。その目標展開のコミュニケーションの部分に、コーチングをはめ込んでみたのです。

 たとえばBSCによる目標展開では、上司と部下の間で話し合い、部下の目標を決めていきます。その後、部下が目標を達成しようと行動を起こす中で、壁にぶつかって上手く目標を達成することが難しくなっていたとしましょう。そのようなときに、上司は部下と話し合いを持ち、どんな様子なのか聞いてみるはずです。そこでは傾聴が必要となります。コーチングでは傾聴が7割といわれます。部下の話を聞きながら経験談やアドバイスを織り交ぜてミーティングを進めていくのですが、大切なことは、上司は部下に解決策を与えることなく、あくまで部下自身に考えさせ行動に仕向けることです。そして、上司は随時サポートを行い、部下に目標達成を成功させてモチベーションを高め、次の仕事を与えながら成長させていくという、人材育成につなげていく手法がコーチングです。

 前述した記事には、成果型評価が基本のジョブ型は納得感がないと逆効果(疑問や不満)になること、そして、上司と部下がコミュニケーションを密にして信頼関係を築くことが今まで以上に重要とあります。その手法のひとつとして、1on1(ワンオンワン)を紹介しています。いわゆる考課面談とは異なり、悩み事やキャリアの相談にのり、経営方針への疑問などを話し合うなど「部下のためのミーティング」です。すべての部下に平等に時間を割くことにも意味があります。結果が出ない本当の理由を探り、主体的な取り組みにつなげることができれば、部下や組織のパフォーマンスも上がるはずと解説しています。1on1でも傾聴やコーチング(目標達成にむけた能力や行動を引き出す)などのスキルが必要になります。そして、働き方改革は古い体質から抜け出せない上司の改革でもあると、その記事は結んでいました。

 サーバントリーダーシップという言葉があります。本当のリーダーは、部下に信頼され、部下に奉仕し、相手を導くものだといわれます。1on1やコーチングは、上司や管理職がサーバントマネージャーに変身するための彼ら自身の育成プログラムでもあると言えるでしょう。

(参考:「ジョブ型雇用に上司の壁」日本経済新聞、2021年2月17日)