高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

オープンイノベーションの3つのタイプを考える

 日経ビジネスの特集号に、3つのタイプのオープンイノベーションが紹介されている。1つは「インバウンド型」。サッポロビールでは、外部のアイデアや技術を取り込み、マーケティング開発部ビジネス創出グループが取り組み始めた事例が記載されている。理由は、ビール会社の社員だけでできる創造には限界があるからで、最終的な判断を下すのは、発案者である消費者だという。消費者ならではの創造性に触れるオープンイノベーションが社内のビール開発に新たな風を取り入れる効果も、サッポロビールは期待をしているのだ。
 2つ目は「アウトバウンド型」。内部の技術やノウハウをさらけ出すことで、外部との連携を促す試みで、実践事例として富士フィルムが挙げられている。本社の一角にある「オープンイノベーションハブ」で虎の子の技術を外部の企業に紹介し、そこでの議論を基にオープンイノベーションの目標を具体化していく。相手企業は、どの技術に興味を持ちそうか、富士フィルムとしては、どの技術で相乗効果が生まれそうだと期待しているかなど、様々な角度から相手が関心を持ちそうなテーマを検討し、あらかじめ10テーマ未満に絞って技術を紹介する。花王がヘアサロン専用ブランド「ゴールドウェル」で発売した、鮮やかな発色を特徴とするヘアカラーリング製品は、その成果だという。
 そして、3つ目が、「連携型」と呼ばれるタイプである。より広く連携先を募り、新たな事業アイデアを発掘し、新しいビジネスモデルの確立を目指す動きを指す。短期集中型でアイデアの検討・検証をする「アイデアソン」や、大企業がスタートアップに投資する「CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル」といった取り組みが代表例。スタートアップとの関係を早くから構築する狙いや、日立製作所と博報堂DYホールディングスがCVCを創設して有望なスタートアップと接点を持っておきたいという企業の姿勢が垣間見える。
 一方、過去に流行したマネジメント手法と同じように、オープンイノベーションという手段が目的になってしまっているケースも散見されるようだ。ブームに乗り遅れないように、とにかく何かやらなければというような焦りが、カタチだけのオープンイノベーションになってしまうのだろう。この傾向は、今に始まったことではなく、日本の企業社会における負の活動側面といえるかもしれない。難しいところである。

(出所:「もう失敗させないオープンイノベーション」『日経ビジネス』2019年7月15日号)