高橋義郎のブログ

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BSCを見直す(9)BSCの視点の因果関係で企業分析を!

 BSCの4つ(或いは5つ)の視点の因果関係は、企業などの経営情報を整理するときに役立ちます。少しカッコよく言えば「簡単な経営分析」とも言えるもので、筆者は日常的に利用しています。例えば、最近のビジネス誌(日経ビジネス、2024年2月19日号)に紹介されたミスミという企業について考えてみたいと思います。

 ミスミグループ本社は膨大な数の変種変量の部品を標準納期2日、納期順守率99.9%で顧客に届けるという経営をしています。超高効率のものづくりは人工知能(AI)などのデジタル技術が支え、その結果として、「ミスミは製造業のアマゾン」と言われる評価を受けているようです。

 すべてがワンストップのウエブサイトで完結できるのは、AIを使ったミスミの自動見積りシステム「メビー」。顧客が入力する機械部品の3次元CADデータにより十数秒で価格と納期を示し、正式発注後に瞬時に工場で生産が始まります。ミスミはモノではなく時間という価値を顧客に提供していることに注目したいところです。

 主な生産品の金型部品では、1日の平均受注件数が毎日3割も増減するとのこと。「最短即日出荷」でさばくには「電子差立で」というシステムで、納期のほか加工に必要な機械や工具が使えるタイミング、従業員の出勤状況といった様々な要因を勘案して受注部品の生産順序を決めるデジタル技術で自動生成。加えて、自社開発した研削盤「アラシ」の改良により1ロットあたりの製造時間を21時間から40分にまで縮めたという効率化を追求しました。

 受注から加工に入るまでが手間暇の温床でしたが金型部品のリードタイムは工場稼働当初に比べ30分の1に短縮され生産性は7.5倍に。金型部品では競合他社と比べてコストを半減できているということです。一方、メビーは顧客が生産してほしい部品を自由にアップロードするので型番はなく、型番レスのデジタルものづくりは、 3D図面データから直接すぐに加工に入る製造モデルにより「時間価値にもっとこだわる」ものづくりの革新を続けています。

 そのようなミスミの経営をBSCの5つの視点の因果関係で表すと次のようになるのではないでしょうか。読者の意見を待ちたいところです。

<組織価値・財務の視点>
・中期経営計画の達成
・高い金型部品の生産性の実現
   ↑
<顧客・社会の視点>
・製造業のアマゾンと高評価される高い顧客満足度の獲得
・モノではなく時間という顧客価値の提供
   ↑
<業務の変革・改善プロセスの視点>
・金型部品のリードタイムの大幅短縮
・納期順守率99.9%の実現
・変種変量の部品の標準納期2日の実現
・自社開発した研削盤「アラシ」の改良による製造時間の大幅短縮
・自動見積もりシステム「メビー」による見積もり業務時間の短縮
・「電子差立て」による受注部品の最適・最短な生産順序の決定
   ↑
<学習と成長(人や組織の能力)の視点>
・超高効率ものづくりへの人工知能(AI)などのデジタル技術システム構築
・DXで自動見積、電子差立、加工プログラム等を自動生成するシステム開発
・経営目標実現に向けた人財育成(求められる力量を保持した人的資源確保)
   ↑
<経営の視点>
・時間価値提供にこだわり最短即日出荷方針を実現し、モノづくり革新を継続。

(以上)