高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

BSCを見直す(10)ツルハとウエルシアの経営統合に見るBSC的考察

 企業や経営の情報に触れると、バランススコアカード(BSC)のフレームワーク(5つの視点の因果関係)でそれらの情報を整理する習慣がついてしまい、その一例を最近掲載された新聞記事を材料にして考えてみました。その記事は「ツルハとウエルシア、経営統合へ」(日本経済新聞、2024年3月10日付)という見出しで掲載されたもので、「稼ぐ力の向上急務」という副題が紙面に踊っていました。

 ドラッグストア首位のウエルシアホールディングス(HD)(以下、ウエルシア)とツルハホールディングス(以下、ツルハ)が2027年末までに経営統合し、調剤を柱に健康関連事業を構築してアジア有数のヘルスケア企業を目指し、そのため、「稼ぐ力」の向上が急務になるという話でした。両社の連合で、病気予防から治療まで包括的にサービスを提供する総合ヘルスケア企業になろうという目的で、食品の購買データや薬歴などの情報を一元化し、日々の食事指導から病気にかかった時の相談にも対応するという結構な戦略のシナリオが報道されていました。

 ベンチマーキング先とも言える先行モデルは米国のCVSヘルスで、健康保険、薬局サービス、小売りの3つの総売上高は約47兆円(22年度)に上る企業です。ウエルシアとツルハの売上高(22年度)は3406億円。調剤最大手のアインホールディングスを上回る規模ですが、稼ぐ力(収益性)は国内の競合に見劣りすると言われています(純利益vs営業利益率の2軸マトリクス図による)。統合効果で稼ぐ力を高めるには、仕入れ先や経営手法などを一致させて、足並みをそろえる必要があるとのこと。マツキヨココの場合、旧マツキヨのやり方にココカラフファイン側が合わせてことで収益が改善した事例も紹介されていました。簡単すぎる事例かもしれませんが、

<財務の視点>
・「稼ぐ力」の向上(純利益、営業利益率など)
   ↑
<顧客の視点>
・調剤業界でのマーケットシェア拡大
・健康支援による評価の向上
   ↑
<変革プロセスの視点>
・アジアでのマーケティング戦略の展開
・病気予防から治療まで包括的にサービスを提供する業務体制の構築
・両社の仕入れ先や経営手法などを一致させる取り組みとシナジー効果
   ↑
<組織能力の視点>
・顧客の食品購買データや薬歴などの情報の一元化
・米国CVSヘルス社のベンチマーキング
   ↑
<経営の視点(目指す姿)>
・調剤を柱に健康関連事業を構築してアジア有数のヘルスケア企業を目指す

などといった5つの視点の因果関係で整理できるのではないでしょうか。BSCのフレームワークで経営情報を整理すると、戦略のシナリオやストーリーが「見える化」できると考えていますが、如何でしょうか。

(以上)