高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

経営品質の散歩道(8)経営品質は終わりのないジャーニー

 日本経営品質学会という小規模な学会がある。昨年の学会は11月に開催された。その基調講演にD社のスピーカーが出講し、いままで取り組んできた職場風土変革や、組織価値観(使命・ビジョン・方針)の徹底浸透による組織活性化についての事例を紹介していた。

 筆者の記憶によれば、D社のスピーカーの方は、この変革の取り組みには、やはり10年くらい掛かりましたね、と話していた。経営品質向上の活動は、終わりなきジャーニーと呼ばれている。10年は最低の期間で、実際にはもっと長い時間をかけて取り組んでいる組織が多いと伺っている。

 10年という数字には、それなりの根拠があるようだ。『日本文明のかたち』(文春文庫)で司馬遼太郎と対談しているドナルド・キーンさんは、10年くらいかけると伝統を創り出すことができる、と話していた。

 横道にそれるが、司馬さんはキーンさんとの対談の中で、日本人の便宜主義ということに触れている。言い換えると、古来より日本には海外から多くの文明が入ってきたが、日本人はそれらの文明を日本の島国というお皿の上に乗っけるだけで、それらの真理や原理には鈍感だったのではないかということである。これは今の経営活動でも同じような傾向が見られるような思いがする。

 たとえば、欧米が生み出し発信してきた経営管理手法を、本来の目的や「肝」を理解せずに、とっかえひっかえしながら導入している組織はないだろうか。年末にあたり、心したいところだ。

参考:司馬遼太郎(著者代表)(2006)『日本文明のかたち』文芸春秋、文春文庫

以上