高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

ビジョンとソニーGの復活

 もう5年以上前の話になりますが、某ソニーグループの会社で、リスクマネジメントの講演をさせていただいたことがあります。同社の担当マネージャーが筆者のISO31000(リスクマネジメントの国際規格)セミナーを受講され、その後に講演の依頼があったものでした。講演の折に、同社の経営方針や戦略計画を教えてもらったのですが、そこには「感動」という言葉が散りばめられていた記憶があります。
 最近になって、ソニーグループはビジョンを明らかにして復活を遂げつつあるという新聞記事があり、同社の経営方針の説明会で語られたのは、数値目標ではなく、その代わりに「感動」という言葉が多用されていたとの報道でした。経営学の講義では、経営者のリーダーシップとともにビジョンやミッションの重要性を示唆することが儘ありますが、ソニーグループも、その例外ではなかったのだなと改めて感じました。この記事の最大の教えはビジョンを示した経営構造改革の重要性でしょう。
 感動を求めるなら、コモディティ(汎用)化した製品からは手を引き、映画や音楽といった、それまでは傍流と見なされていた事業の力をフルに活用するという、実にシンプルな方向を定めたということでしょうか。ソニーのグループ横断の資産を活用する成功事例や、ビジョン主導の業態転換のベストプラクティスを期待したいところです。
 日本の電機業界だけの話ではありませんが、「選択と集中」を叫びながら、「将来はこんな会社を目指す」という長期ビジョンが達成された事例は、残念ながら少ないように思えると、その記事は述べています。目先の収益を確保するために、かつての経営の延長線上で勝負をしている限りでは、情けないと言えるでしょう。
 ビジネスエクセレンスモデル(経営品質)でも、リーダーがビジョンを示し従業員に理解共有することの重要性から始まっています。今こそ、経営者は長期戦略を語る時だると、社説の執筆者は結んでいました。

(参考/引用:日本経済新聞、2021年5月27日)