高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

BSCを見直す(12)ドンキ流経営に見るBSC的考察

 ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナル(HD)がスーパー(GMS)大手ユニーを買収して5年が経過した。1店あたりの営業利益は2割増え、生鮮品や総菜などの調達網を共有し、効率的に収益を上げている。パンパシHDの財務指標、例えば営業利益も改善し、固定資産回転率は2.12回と0.2回転良化し、ROA(営業利益ベース)は23年6月期に7.1と競合他社を大きく上回っている。

 パンパシHDが施した改善策は大きく2つある。まず、ユニーの店舗を「仕分け」した。一部は生鮮品を扱う「MEGAドン・キホーテ」業態に転換し、「アピタ」「ピアゴ」などの総合スーパー数を減らした。次に、ドンキ流の経営ノウハウを注入。1万9千人のパート・アルバイト従業員に権限を与え、仕入れから棚割り、値付け、在庫管理まで責任を持たせた。店員同士で競わせ、現場のコスト管理の意識を高めた。本部が主導する一部のセールはやめ、店舗ごとの独自セールを増やし、光熱費の使用量も店舗ごとの管理とした。

 シナジー効果のひとつは、ユニーの持つ生鮮品と総菜の調達網の活用がある。相乗効果は年間で100億円、営業利益への貢献も200億円以上になったという。今後は、ユニーの顧客と従来店舗を融合し、いかにしてパンパシ経済圏を形成するか、今のところ50~60代の買い物客が中心というユニーに、若者層を呼び込めるかがひとつの指標となる。

 そんなパンパシHDの経営をBSCの4つの視点で整理すると次のようになるのではないか。読者の意見を待ちたい。

<財務の視点>
・戦略的財務指標の改善(営業利益率、ROA、販管費比率、1店あたり営業利益、固定資産回転率など)

<顧客・社会の視点>
・MAJIICAアプリ利用者の増加
・ユニーへの若者層顧客の増加
・M&Aの好事例としての社会的貢献

<変革プロセスの視点>
・ドンキ流経営ノウハウの注入
・ユニーの店舗を「仕分け」し一部は生鮮品を扱う「MEGAドン・キホーテ」業態に転換
・店員同士で競わせる現場コスト管理の意識向上とコスト削減
・店舗ごとの独自セールを増やし光熱費の使用量も店舗ごとに管理
・ユニーの持つ生鮮品と総菜の調達網の活用によるシナジー効果実現

<学習と成長の視点>
・パート・アルバイト従業員への権限移譲(仕入れから棚割り、値付け、在庫管理など)
・会社の垣根を越えて活躍できモチベーションが高まる経営環境の醸成

(参考:日本経済新聞2024年4月23日)

(以上)