高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

「あるべき姿」と「仮説・検証体験」

 新年に受け取った日経ビジネス誌(1月8日号)の巻頭言「有訓無訓」に、サッポロホールディングス会長の上條努氏が、『気持ちを素直に出して、おかしいと思えば変える、攻めてこそ人生は楽しい』というタイトルの談話を、披露していた。
 このコラムの中で気になった用語は、「あるべき姿」と「仮説を立てて実行し検証する」という2つのキーワードである。
 「あるべき姿」は、経営者のリーダーシップとして、組織の方向を示す場合によく使われる用語であり、「仮説→実行→検証」もマネジメントのPDCAとして頻繁に出てくる基本的なフレームワークとして考えられるものである。
 上條氏は、サンフランシスコ支店長時代に米国で総代理店の契約を結んでいる企業があり、その企業が米国各地の問屋に商品を卸していたことを振り返り、これではメーカーとして主体的にブランドをコントロールできないという問題を指摘した。
 ここで、「あるべき姿」が語られる。彼は、やはり同社(サッポロビール)が各問屋に直接商品を卸すのが「あるべき姿」であり、総代理店の契約は、やめようと思ったという。
 この提案に対し、東京の本社では、歴史ある取引を変更することを懸念したが、結局、押し切った結果、ビールの販売数量を全米で9割増やすことができたという。
 おかしいと思ったことは直す、という基本的な考えを持ち、思い切って仮説を立てて実行し、検証するという体験が、経営者としての自信を持たせることになったのである。
 その後、同社が直面する国内市場シェア低迷や、社員のモチベーション低下などの経営課題に直面する状況においても、その体験が役に立ったことであろう。
 新年にあたり、ビジネスエクセレンスモデル(経営品質向上のフレームワーク)におけるリーダーシップや方針と戦略に関連する「あるべき姿」と「仮説と検証」について、再考する機会ではあった。

(参考:上條努「有訓無訓」『日経ビジネス』2018年01月08日号、p.Ⅰ)