高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

BSCを見直す(4)5つの視点の因果関係と全体最適化経営

 筆者が持ち続けてきた研究テーマのひとつに、全体最適化経営があります。具体的には、ビジネスエクセレンスモデル(BEM)を軸として経営のフレームワークを整え、目標管理をバランススコアカード(BSC)で、その実践ツールとしてISOマネジメントシステム(ISO・MS)を活用していく経営のモデルでした。これらBEM、BSC、ISO・MSは、いずれも5つの視点の因果関係という共通した構成要素を持っているために、一緒に使っても相互に阻害される要因がほとんどないという背景があります。

 また、この5つの視点の因果関係のモデルを縦糸に例えるならば、横糸には様々なビジネスモデルや業態を織り込んでいくことが可能になるはずです。そういった意味において、5つの視点の因果関係は、経営における普遍的な理論として捉えることができるのではないかと、筆者は考えています。これまでの研究成果は、『経営は5つの視点の因果関係で考える』(桜美林大学出版会、2022年)をはじめ、文末の参考文献に紹介した文献等にまとめてみましたので、ご興味のある方は一読願えれば幸いです。

 世の中に多くの好事例があるなかで、前回では石坂産業株式会社の事例を紹介させていただきました。選ばせていただいた理由の1つ目は、前述した3つの全体最適化経営のモデルに合致していたことです。2023年3月に開催された桜美林大学大学院のビジネス戦略セミナーに登壇いただいた石坂産業株式会社のお話の中でも、同社の取り組みが5つの視点の因果関係と整合していることを示唆されていました。 

 2つ目としては、実際に5つの視点の因果関係で分析すると、きちんと分類・整理されて検証ができたということでした。特に、日本経営品質賞という社会システムのビジネスエクセレンスモデルに、ISOマネジメントシステムという技術システムを融合させた経営の取り組みは、筆者にとりまして非常に興味のある研究事例と言えます。

 「エクセレントなのは経営ではなくて、経営者である」という主張を持つ著名な教授がおられます。彼の著書を読んでみると、「経営とは人なり」という古い言葉が脳裏に強く浮かんできます。筆者も、5つの視点の因果関係と全体最適化経営の導入と展開の経験を通じて、同じ思いを持ったからでした。ただ、いかに優れたリーダーやスタッフがいても、やはり仕事を支える仕組みがないことには、なかなかうまく進めていくことはできないのではないでしょうか。

 そのような意味で、5つの視点の因果関係の考え方が、より多くの組織やビジネスリーダーに利活用されることを願い、今回までの参考文献を以下に紹介しておきます。

(参考文献>

・高橋義郎「10分間で学ぶ経営管理」『日経情報ストラテジー』2006年1月号~6月号

・高橋義郎「戦略の空文化を防ぐ非財務指標の選び方」『日経ビジネスマネジメント』 Spring, 2009, Vol.005

・高橋義郎『使える!バランススコアカード』PHPビジネス新書、PHP研究所、2007年

・高橋義郎(共著)『革新的中小企業のグローバル戦略』同文舘出版、2015年

・高橋義郎「ISO・全体最適経営」『中堅企業の成長戦略』同文舘出版、2017年

・高橋義郎「5つの視点の因果関係で導く全体最適経営」『アイソス』システム規格社、2022年、7月号

・高橋義郎『経営は5つの視点の因果関係で考える』桜美林大学出版会、論創社、2022年

・経営品質協議会『2011年度版経営品質向上プログラムアセスメントガイドブック』生産出版、2011年

・日本経営品質賞委員会『2021年度版日本経営品質賞アセスメント基準書』生産性出版/日本生産性本部、2021

・日本経営品質賞委員会・石坂産業株式会社『2020年度経営品質報告書(要約版)』生産性出版、2021年

・島麻希子『ソーシャルシステムの石坂産業における実践事例』桜美林大学大学院ビ ジネス戦略セミナー講演録、2023年2月

(以上)