高橋義郎のブログ

経営品質、バランススコアカード、リスクマネジメント、ISO経営、江戸東京、などについてのコミュニティ型ブログです。

BSCを見直す(3)5つの視点の因果関係と経営品質向上活動

 石坂産業株式会社は既に多くのメディアで報道され、日本経営品質賞受賞企業として著名な企業なのですが、本稿のテーマである「5つの視点の因果関係で読み解く経営品質向上活動の実践例としての切り口で、再度考察してみることにします。
 受賞後に発行された『2020年度経営品質報告書要約版』によると、同社は理想的な姿実現に向け、ISOの要求事項に基づく評価軸(いわゆる技術システム)と、経営品質向上プログラムの評価軸(いわゆる社会システム)の2つのフレームで振り返りを行っています。
 7種のISOマネジメントシステムを統合した業務プロセスの是正・改善の取組みに、あるべき姿に対する組織の成熟度や成長レベルを評価する経営品質の視点を融合させたものにし、日々の取組みの振り返りにおいては、PDCAL(Plan-Do-Check-Act-Learn)の考え方をもとに振り返りを実施しているそうです。
 なかでも、教育プログラムの品質向上のため、ISO29990(現在ISO29993)の学習・サービスの国際規格を新たに取得していることや、「見せる経営」としてコーズ・リレーテッド・マーケティングを展開し、来場者に同社の施設や取り組みを見せることで、先進的な取り組みに理解を促し認知度を高め、口コミ効果で理念や価値に共感する顧客を創出し(CSV)、B2BからB2Cに売上や利益を向上させる戦略をとるなど、卓越した路線を歩んでいることは特筆されるべきことでしょう。
 価値創造プロセスの視点から言えば、廃棄物処理の「縮減」事業から「資源化」事業に業態転換を図り、特に不法投棄の中でも量が多く同業者が資源化に手を出さない事業領域である土砂系建設廃棄物と建設発生土が混ざった建設副産物を資源化する分別分級の技術開発に専念。土砂系を資源化する専門設備や機器メーカーは存在しないため、自社で複合的に設備機器を組合せトライ&エラーを繰り返し独自の処理プラントを完成させ、この技術開発が、現在同業者の廃棄物を受入れることに繋がっているなど、なかなか目のつけどころが素晴らしいですね。
 アウターブランディングと並行して、社員が光り輝き個性が発揮できる職場づくりにインナーブランディングの強化に取り組み、給与体系の仕組みを複線型人事制度に改正し、リーダーシップを発揮できる人材づくりのための教育研修も多く実施していました。これらは、組織や個人の能力の視点に関わる取り組みとも考えられ、ひいては事業計画に基づいたマネジメントと社員個人の力量と紐づけた目標管理制度の導入からも伺われます。
 組織の能力向上では、知識・技能x心構えx考え方=仕事力と定義しています。そこにもインナーブランディング展開に向けた組織風土の見直しや、社員の能力開発と人間力を高める研修もあるようで、QCサークル活動、3S徹底強化などに加え、ISOマネジメントシステムの内部監査でも、相互監視型から内部監査員と被監査部門の創発をする「対話型」のスタイルに移行しているところは、注目したいところです。
 以上に紹介してきたような活動の成果の一部を5つの視点の因果関係で分類し、各視点毎に目指す目的・目標、達成状況を把握する方法・指標をまとめたものを拙書『経営は5つの視点の因果関係で考える』(桜美林叢書)に掲載してありますので、ご興味があればご一読願えれば幸いです。

(以上)